- スターリンの葬送狂騒曲 The Death of Stalin
237 :名無シネマ@上映中[sage]:2018/11/22(木) 01:37:07.76 ID:H5TYBybo - スターリンからの電話! スターリンが映画監督のドヴジェンコに電話をかけた。
スターリンが作家のエレンブルグに電話をかけた。年に一、二回、モスクワ中にそんな噂が流れたりした。 誰それに賞を与えてやれ、住宅を与えてやれ、あいつのために科学研究所を建ててやれ! スターリンにはそんな命令を発する必要がなかった。そんなことを口にするには、彼はあまりにも偉大すぎた。 そういうことはすべて、彼のとり巻きがやったのである。 とり巻き連中は、スターリンの目の表情で、声のイントネーションで、その意向を察知した。 スターリンは人に気さくな笑顔を見せるだけでよかった。 すると、その人の運命は変わるのであった――闇の中や無名の状態から抜け出て、 その人には名声、尊敬、力が雨のように降り注いだ。 そして、大きな勢力をもつ何十もの人が、その幸運な人の前で頭を下げるのである―― なぜならスターリンが彼に微笑みかけたのだから。電話で話しながら冗談を言ったのだから。 スターリンの一言で、数千、数万の人々を殲滅できた。 元帥、人民委員、党中央委員会メンバー、州委員会書記など、昨日は軍や方面軍を指揮し 地方や共和国や巨大工場を支配していた人々が、今日はスターリンの怒りの一言によって、 とるに足らぬ人物やラーゲリの塵となったり、小さな飯ごうをガチャつかせながら ラーゲリの炊事場で薄い粗末な雑炊を心待ちにしたりすることがありえた。 人生と運命 3 ワシーリー・グロスマン著 齋藤紘一訳 (みすず書房刊)P246-247より
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238 :名無シネマ@上映中[sage]:2018/11/22(木) 01:39:28.23 ID:H5TYBybo - 全体主義の暴力の大鍋の中で人間性は変化するのだろうか、他のものになったりするのだろうか。
人間は自由でありたいという本然の希求を失うことがあるのだろうか。 これに対する答えに、人間の運命と全体主義国家の運命とがかかっている。 人間性そのものが変化するというのならば、それは国家による独裁の全面的、永久的勝利を約束する。 自由に対する人間の希求に変わりはないというのならば、それは全体主義国家に対する判決となる。 ワルシャワ・ゲットーの偉大な蜂起、トレブリンカとソビボールの蜂起。 ヒトラーにより隷属させられた数十の国において燃え上がった広範なパルチザン運動。 スターリン後の一九五三年のベルリンでの蜂起と一九五六年のハンガリーでの蜂起。 スターリンの死後に見られたシベリアと極東のラーゲリを席捲した蜂起。 同じ時に起きたポーランドでのサボタージュ。思想の自由の弾圧に反対して 多くの都市で起きた学生の抗議行動。多くの工場におけるストライキ。 こうしたすべてが、人間本来の自由に対する希求が根絶やしにはされないことを示した。 自由に対する希求は鎮圧された。しかし、存在し続けている。 奴隷状態に貶められた人間は、運命によって奴隷となったのであって、 その本性によってなったのではないのである! 自由に対する人間の自然な希求は根強く、弾圧はできるが、根絶はできない。 全体主義は暴力を手放すことができない。 暴力を手放せば、全体主義は死ぬのである。 直接的あるいは偽装されたかたちで永遠に続く絶えざる圧倒的暴力が全体主義の基礎である。 人間は自らの意志で自由を放棄することはない。 この結論のなかにこそ、われわれの時代の光、未来の光がある。 人生と運命 1 ワシーリー・グロスマン著 齋藤紘一訳 (みすず書房刊)P314-315より http://www.msz.co.jp/topics/07656-07658/ ワシーリー・グロスマン『人生と運命』 齋藤紘一訳 [全3巻] http://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/n/nino41/20141030/20141030193013.jpg
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239 :名無シネマ@上映中[sage]:2018/11/22(木) 01:43:33.16 ID:H5TYBybo - http://www.msz.co.jp/topics/07656-07658/
「グロスマンが東部戦線をだれよりも多く見てきた事実は、はかり知れないほど貴重だ。 …グロスマン自身は残忍な世紀によってなぎ倒されたかもしれないが、 彼の人間性と勇気は著作のなかで生きつづけている。」 アントニー・ビーヴァー (『赤軍記者グロースマン』著者) http://www.natsume-books.com/i_item/2016/01/219400.jpg http://www.kinokuniya.co.jp/images/goods/ar2/web/imgdata2/large/40226/4022614773.jpg http://yamaneko-bookstore.com/modules/zox/images/4560026009.jpg アントニー・ビーヴァーはスターリングラード戦やベルリン攻防戦の名著も書かれた方です http://mas-yamazaki.c.blog.so-net.ne.jp/_images/blog/_043/mas-yamazaki/moscow1941.JPG http://ona.c.blog.so-net.ne.jp/_images/blog/_1d6/ona/E383A2E382B9E382AFE383AFE694BBE998B2E688A6-010cc.jpg http://pds.exblog.jp/pds/1/201512/06/38/b0138838_20522977.jpg ここ数年で出版された独ソ戦に関する著作でも「人生と運命は」は取り上げられてました
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240 :名無シネマ@上映中[sage]:2018/11/22(木) 01:44:01.86 ID:H5TYBybo - http://i.pinimg.com/736x/b3/75/09/b37509f7318f1a6bf5b139732b265aab--family-trees-fate.jpg
以前BBCラジオでラジオドラマ化した際の人物相関図 原作はこれ以上に登場人物多く複雑です http://bookmeter.com/books/4524089 Susumu Uchiyama アメリカのアマゾンダットコムで、「人生と運命」の2012年にロシアで作られた TVドラマが英語の字幕つきで放映されています。 この「人生と運命」のTVドラマは非常に現実的でまた感情的で、 映画の「スターリングラード」も「セイビングプライベイトライアン」も「バンドオブブラザー」も また日本の「永遠のゼロ」も飛び越えて、自分の意見ですけど、 今まで見てきた映画やTVドラマの中で1番感動した作品でした。皆さんも見てください。 私はこの「人生と運命」の英訳の本を読んでいますが、本当に感動する力作だと思います。 10/07 09:13 http://www.amazon.com/Episode-1/dp/B074XG2MQB/ref=sr_1_1?s=instant-video&ie=UTF8&qid=1507826291&sr=1-1&keywords=Life+and+Fate Life and Fate 2012 お金出したくない方には(ロシア語ですが)配信されてました http://www.youtube.com/playlist?list=PLFwn5mqJn1ssCzo-SvW4jQLo9XIM1DqQ2 http://tvkultura.ru/video/show/brand_id/12045/episode_id/163112/video_id/163112/ http://cdn-st4.rtr-vesti.ru/vh/pictures/gallery/197/927.jpg TVドラマでの人物相関図 原作読み終えた方ならロシア語わからなくてもおおよその場面はわかる?はずですし ビジュアルで小説でのイメージ補完にはなると思います ただ登場人物もかなり減らし、原作もかなり弄ってます(収容所シーンとかありません)
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241 :名無シネマ@上映中[sage]:2018/11/22(木) 01:51:07.66 ID:H5TYBybo - http://sabasaba13.exblog.jp/20130823/
『人生と運命』 贅言はやめましょう。それでは本書の中で、 語られ囁かれ叫ばれる珠玉の言葉をいくつか紹介して筆を置きます。 「人間を羊のように指導するなんてことはできない。いくら聡明であったとはいえ、 あのレーニンもそれを理解できなかった。革命は誰かが人間を指導するなんてことをなくすためなのだ。 なのにレーニンは言った、『以前、あなた方はばかげた指導のされ方をしていた。 私は賢いやり方で指導しよう』」 (1p.389) 社会主義リアリズムとは何かについての議論があったが、 社会主義リアリズムとは、《この世で一番愛らしく一番きれいで色が白いのは誰か?》という 党と政府からの質問に対して、《党、政府、国家、あなたです。 誰よりも頬がバラ色で愛らしいのは、あなたです!》と答える鏡のことなのだ。(1p.427) 反ユダヤ主義は、自らの不幸と苦悩の原因を究明する力のない国民大衆の意識の低さの表れである。 無知な人々は、自らの大きな不幸の原因が国家機構や 社会制度にではなくユダヤ人にあると見る。(2p.262)
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242 :名無シネマ@上映中[sage]:2018/11/22(木) 01:55:49.25 ID:H5TYBybo - >>237-241
この作品は第62軍の各将校、(後に原爆開発に関る)ユダヤ人科学者一家、 強制収容所送られた科学者の母、科学者娘と付き合ってる戦車軍団の大佐、科学者娘の元彼のコミサール、 ラーゲリに送られた科学者家族、独強制収容所内の革命期の古参活動家、 スターリングラード発電所長一家、実在のチュイコフ、エリョメンコ、パウルス、 ヒトラー、アイヒマン、そして・・・スターリン等・・・膨大な数の人物が出て、 10数Pごとの舞台を変えた短編が次々と続き、最初は人物関係の把握に戸惑うでしょう (スターリングラードが舞台ですが戦記みたいな詳細な戦闘場面はあまりありません) 1巻目は読み終えるのにとても難渋しますが巻が進むにつれ関連性が徐々に明らかになり 最後の3巻目は一気呵成に読むことができると思います・・・・読後感はとても素晴らしいです 著者(独ソ戦取材中)はトルストイ「戦争と平和」を携帯して何度も読んだとかで 「戦争と平和」を読破できた方なら作品のスタイルが似てるので困らないと思います (ところどころ著者の歴史観とか入ってます)
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243 :名無シネマ@上映中[sage]:2018/11/22(木) 02:00:44.76 ID:H5TYBybo - >>242
あと、グロスマンの伝記本と彼の遺著があります 「人生と運命は」も大著で値段も高価なので 興味あったら買うか、それが無理でしたら図書館で借りてみてください http://www.msz.co.jp/book/author/15991.html ワシーリー・グロスマン 1905-1964 独ソ戦中は従軍記者として前線から兵士に肉薄した記事を書いて全土に名を馳せる。 44年、トレブリンカ絶滅収容所を取材、ホロコーストの実態を世界で最初に報道する。 次第にナチとソ連の全体主義体制が本質において大差ないとの認識に達し、 50年代後半から大作『人生と運命』を執筆、60年に完成。 「雪どけ」期に刊行をめざすが、KGBの家宅捜索を受けて原稿は没収、 「今後2-300年、発表は不可」と宣告される。 胃がんを患い死を前にしたグロスマンは『万物は流転する』を入院先の病院に持参し、 最後の数年を共にした恋人エカテリーナ・ザボロッツカヤに極秘に託した。 独ソ戦の従軍記者として名をはせたこの作家が のちにファシズムと共産主義が大差ないという認識に至ったか 興味あったら図書館でどうぞ http://ona.blog.so-net.ne.jp/2011-10-11 アントニー・ビーヴァー著の「赤軍記者グロースマン」 http://shukan.bunshun.jp/articles/-/1183 20世紀ロシア文学の傑作、待望の翻訳刊行 『人生と運命』全3巻 (ワシーリー・グロスマン 著/齋藤紘一 訳) http://www.msz.co.jp/book/detail/07784.html 万物は流転する 1953年、スターリンが死んだ。神のような指導者の突然の死が、国土を震撼させる。 ラーゲリ(強制労働収容所)からは何百万もの人びとがぞくぞく出所してきた。 主人公イワン・グリゴーリエヴィチは自由を擁護する発言を密告され、29年間、囚人であった。 かつて家族の希望の星だった青年は、老人となって社会に戻った。 作家グロスマンが死の床でも手離さなかった渾身の遺作。
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