- 一人暮らしの林住期 7 「晴耕雨読」
243 :名無しさん@お腹いっぱい[]:2013/07/29(月) 19:07:25.34 ID:DtnVx4ac - 俺は11年前の今日、タイのバンコクにいた。
地元のブローカーの男とコンビニに入った時だった。30代前半と思われる 女が、いきなり俺の腕を掴み、なにやらわめきだし俺の胸で子供のようにオ イオイと泣いた。 店員に外に引きずりだされる女を横目に俺は踵を返してショートホープを の金を払った。 仕事を終えて夜、ホテルで連れてきた通訳の女に昼間のコンビニの件を 聴いてみた。あの女のダンナが死んだそうだ。 腎臓を売り、苦しんで死んだらしい。わずかな金で日本の子供を助けて くれと言われたらしい。そのブローカーと俺が一緒にいたことで俺がそ の子供の親と思ったらしく子供は助かったのかと必死で俺に聞いていた と言っていた。 生活の為、金の為、人を助ける為だと騙され自分の臓器を安い金で売って 死んだ夫、せめて俺に子供の命は助かったと言わせたかったのだろう。 染みのついたワイシャツを丸めて竹織のゴミ箱へねじ込むと、俺はシャワ ーを浴びた。
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