- 三島由紀夫VS太宰治
772 :大人の名無しさん[]:2011/12/22(木) 10:06:05.81 ID:5AG0vuBF - 今の日本の大威張りの根拠は、みんな西洋発明品のおかげである。
これはそもそも、大東亜戦争の航空機についてさへ言へることで、あの戦争が日本刀だけで戦つたのなら 威張れるけれども、みんな西洋の発明品で、西洋相手に戦つたのである。ただ一つ、真の日本的武器は、航空機を 日本刀のやうに使つて斬死した特攻隊だけである。 そして今日の「日本は大したもんだ派」は、みんなこの上に立脚してゐるのである。私がお茶漬ナショナリストと いふのは、かれらのナショナリズムの根拠を追ひつめてゆくと、舌の上に感じる「ものの味」といふ、どうにも 否定できない、しかも主観的で説得力のない、さういふもののエモーションを一方に持ちながら、一方では 文明開化以来の迷妄に乗つかつてゐることだ。 では、「日本はまだ貧しい」とか、「日本はどうして大したもんだ」とか言はないで、問題をそんな風に大きく しないで、ただ、 「お茶漬は実にうまいもんだ」 とだけ言つたらどうだらうか? 比較を一切やめたらどうだらうか? 三島由紀夫「お茶漬ナショナリズム」より
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773 :大人の名無しさん[]:2011/12/22(木) 10:06:37.60 ID:5AG0vuBF - (中略)
自然な日本人になることだけが、今の日本人にとつて唯一の途であり、その自然な日本人が、多少野蛮であつても 少しも構はない。これだけ精妙繊細な文化的伝統を確立した民族なら、多少野蛮なところがなければ、衰亡して しまふ。子供にはどんどんチャンバラをやらせるべきだし、おちよぼ口のPTA精神や、青少年保護を名目にした 家畜道徳に乗ぜられてはならない。 ところで、私はこの元旦、わが家の一等高いところから、家々を眺めて、日の丸を掲げる家が少ないことに 一驚を喫した。こんな美しい国旗はめづらしいと思ふが、グッド・デザインばやりの現在、むづかしいことは 言はずに、せめてグッド・デザインなるが故に、門毎に国旗をかかげることがどうしてできないのか? 三島由紀夫「お茶漬ナショナリズム」より
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774 :大人の名無しさん[]:2011/12/22(木) 10:07:02.98 ID:5AG0vuBF - 去秋の旅で、私は二度鮮明な日の丸の思ひ出を持つた。
一つは私の泊つてゐたニューヨークのウォルドルフ・アストリア・ホテルに、たまたまオリエント研究関係の 国際会議か何かで、三笠宮殿下が御来泊になり、正面玄関に大きな日の丸の旗が掲げられ、パーク・アヴェニューに ひるがへつた。これは実に晴れがましい印象だつた。自分も一日本人、一同宿者として、その巨大な日の丸の旗の、 一センチ角ぐらゐを受持つてゐる感じがして、心がひろがるのであつた。 もう一つは、他にも書いたが、ハムブルグの港見物をしてゐたとき、入港してきた巨大な貨物船の船尾に、 へんぽんとひるがへつてゐた日の丸である。私は感激おくあたはず、その場にゐたただ一人の日本人として、 胸のハンカチをひろげて、ふりまはした。 三島由紀夫「お茶漬ナショナリズム」より
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775 :大人の名無しさん[]:2011/12/22(木) 10:07:31.07 ID:5AG0vuBF - かういふことを、私は別に自慢たらしく言ふのではない。私にとつては、ごく自然な、理屈の要らない、日本人の
感情として、外地にひるがへる日の丸に感激したわけだが、旗なんてものは、もともとロマンティックな心情を 鼓吹するやうにできてゐて、あれが一枚板なら風情がないが、ちぎれんばかりに風にはためくから、胸を搏つのである。 ところが、こんな話をすると、みんなニヤリとして、なかには私をあはれむやうな目付をする奴がゐる。 厄介なことに日本のインテリは、一切単純な心情を人に見せてはならぬことになつてゐる。(中略) 自分の国の国旗に感動する性質は、どこの国の人間だつてもつてゐる筈の心情である…(中略) 私の言ひたいことは、口に日本文化や日本的伝統を軽蔑しながら、お茶漬の味とは縁の切れない、さういふ 中途半端な日本人はもう沢山だといふことであり、日本の未来の若者にのぞむことは、ハンバーガーをパクつき ながら、日本のユニークな精神的価値を、おのれの誇りとしてくれることである。 三島由紀夫「お茶漬ナショナリズム」より
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