- 空手の型はやるだけ無駄と言う現実53
521 :名無しさん@一本勝ち[sage]:2013/03/08(金) 11:11:19.70 ID:PzR/WNZd0 - 今回も私の空手人生と、武道から学んだことについて、記したい。
私が今も稽古している空手は「日本拳法空手道」であるが、この日本拳法空手道はよく「 日本拳法」と間違われる。日本拳法は他流派のことだから、その歴史を十分知っているわ けではないが、私と日本拳法との出会いは、昭和36年のことだった。 東京・飯田橋の本部道場で、内弟子として稽古を始めた山田辰雄先生の紹介で日本拳法の 森良之祐最高師範とお会いしたのが縁の始まりである。日本拳法は森先生の努力によって 、その後、関東の各大学に日本拳法部が出来て、大学対抗の試合が行われるようになった 。 私は交流稽古ということで、日本拳法の篠原君とよく稽古をした。彼は後に明治大学主将 となり、個人選で何回も優勝した強者である。ある時、目黒の日本拳法本部道場で「面と 胴の防具」をつけての稽古に出向いたことがあった。防具をつけ、投げ技や逆もある日本 拳法の試合では、鬼のように強い谷口師範、土肥師範、そして篠原君にも相手をしてもら ったが、まるで歯が立たず、19歳の私は自信をなくしそうになった。しかし、日本拳法 空手道の道場での稽古試合では、立場はまるっきり逆だった。 私は篠原君などを子供扱いにしていたものだ。 何故か? リングのウエで相手を撲り、蹴り倒す武道は、防具やルールが違うと、まるで違う戦いにな るのだ。私はそれをサッカーとラグビー、あるいはバレーボールとバスケットボールほど 違うのだと説明している。日本拳法からは、キックボクシングのチャンピオン猪狩元秀、 ボクシングで世界チャンピオンになった渡辺二郎などが出たが、彼らが栄光を掴んだのは 、似て非なる格闘技に挑戦した時の、勝手の違い、戸惑いを、稽古の積み重ねで乗り越え たのだ。
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522 :名無しさん@一本勝ち[sage]:2013/03/08(金) 11:12:24.81 ID:PzR/WNZd0 - 間合いや動きの違い、技の違いを、身体(即ち痛さ)で覚え、克服したのである。私は元
来不器用な男だから、日本拳法と自分の流派である日本拳法空手道の両方をやるのは無理 だと考え、実戦空手である日本拳法空手道一本でやってきた。山田辰雄先生と仲の良かっ た極真会館の大山倍達先生の道場へも何度か行ったことがある。その時、殆どの技は同じ だが、素手とはいえ、顔を撲らない戦い方は、これまたバトミントンと卓球くらいの違い があると感じたものだ。 ボクシング日本ミドル級一位にまでなった小林さんという方がいた。 「山田先生から君にボクシングを教えろ」と言われたと、飯田橋の道場に大柄な小林さん がやって来た。小林さんは、稽古中の私が素手で100sもある丸いサンドバックや巻き ワラ(空手独特の拳を鍛え、当身の力をつけるもの)を打つのを見て、「近藤君、そんな ことをしていると拳を痛める。バンテージを巻いてパンチンググローブで打たないとダメ だ」と注意されたことがある。 「真に相手を打倒する空手試合」と銘打って後楽園ホールで試合をやったことがある。 試合前に、猛者の多い拓大などの大学空手部に「飛入り大歓迎」と書いた案内状を送りつ けた。試合はまずは各地の同門道場生の間で行なわれ、飛入り参加を予定している各大学 の空手部の猛者連中がリングの傍らに集まっていた。 彼らは日本拳法空手道を、技の美しさやスピード感に欠けるものと思っていたのだろう。 盛んに野次を飛ばしていた。 試合は1ラウンド3分の5ラウンドがルールだ。 どの試合もノックアウトで勝負がついていた。 私もリングに上がったが、当時私は65s、相手は同門の神山大先輩で90sだった。 だが、リングに上がったら先輩も後輩もない。私がまずパンチで神山先輩をダウンさせた 。しかし、次のラウンドで、私の攻撃で鼻の骨を折った神山先輩の猛攻で、私はまるでサ ンドバックになったように打たれた。レフリーが私の耳もとで、「後の試合があるから、 早く倒れろ」と囁く。結局はノックアウト敗けを喫した。
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523 :名無しさん@一本勝ち[sage]:2013/03/08(金) 11:13:00.27 ID:PzR/WNZd0 - 後の試合とは飛入り相手の試合のことで、勿論私も参加することになっていた。同門同志
の試合が終わって「これから他流派の希望者との試合です。希望者は本部席へ集まって下 さい」とのアナウンス。一体何人が名乗り出るのかと心待ちにしていたが、希望者は一人 も出てこなかった。他流派の諸君は、日本拳法空手道の同門同志の試合を見て、技のスピ ードが遅く見えても、パンチ力やローキックが如何に凄い破壊力があるかがわかったのだ ろう。彼らがコソコソと逃げるように帰っていった姿は今でも忘れられない。 翌日のスポーツ紙に、この試合の記事が掲載された。曰く、「これは空手ではない」「こ んな殺伐とした試合は人前でやるものじゃない」「こんな試合は世の中が受け入れない」 など書きたい放題に書かれた。しかし、この試合を契機にキックボクシングという名が世 間に広まり、今や格闘技の一世代を築き、総合格闘技の源流となっている。ミャンマーの ビルマ拳法は素手で闘い、今もラウンドの制限はない。10カウントルールもなく、一方 がぶっ倒れ、完全に戦意をなくすまで徹底的に闘うスポーツだ。 人間はそれまでの常識でしか、物事を理解することができない。でも、ちょっとした勇気 を持ちさえすれば、それまで見えなかったものが見えるようになるのだ。
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