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名無したん(;´Д`)ハァハァ
朝起きたら女の子になっていましたpart172 [無断転載禁止]©bbspink.com

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朝起きたら女の子になっていましたpart172 [無断転載禁止]©bbspink.com
495 :名無したん(;´Д`)ハァハァ[sage]:2020/08/01(土) 06:15:14.61 ID:OLRpHxQyd
「ねー勇者さま、魔王って本当に復活したんですか?」

 勇者の横を歩く少女は、魔法使いとして秀でた才能を評価され、魔王討伐の一員として同行している。

「文献通りだと魔王って勇者が誕生したのと同じ時期に生まれているんだ。だから俺がこうして勇者やってるってことは、魔王もこの世界のどこかに居るってこと」

 勇者と魔王の因縁は古くから続いており、その結末は全て魔王が勇者の手によって倒されている。
 魔王と言っても予想通りの化け物の姿をしているのか、それとも勇者と同じく人間が魔王になるのか。倒され、この世界から消え去る魔王が語るわけもなく、また歴代の勇者も口を閉ざしてたため研究は進んでいない。

 だが魔王らしき存在。膨大な魔力を巧みに使いこなし、魔導を極めし王たる器。それは確かに存在した。
 今の魔法使いでは到達できない領域。その超高度な魔法は、過去の遺跡から観測された魔力残滓を復元したことで明らかとなっている。

「魔王ってのはようは悪の権化。悪しき想いが心を染め、魔王へと魂を誘うとされてるんだ」

「へー、でも今まで見てきた人たちも十分な悪人でしたよ?」

「それなんだよなぁ。俺も魔王を見たことがないからよく分からないんだよ」

 勇者特有の勘なのか、彼は魔王とは人間から生まれる存在だと推定し、多くの犯罪者、政治家、統治者を見て回っている。
 魔王に対してのみ真価を発揮するとされる古より伝わる伝説の剣。勇者しか扱うことを許されていないその剣を手にし、鞘を抜いた。
 彼が勇者であることは誰しもが認め、納得をしている。そんな彼が持つ剣。それが全く反応しないのだ。
 魔を断つとされるその剣は、それ以外の者にはただのよく切れる剣と変わらず、魔獣などの魔法を使う獣に対しては通販番組で見た包丁よりもすぱすぱと切れている。
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496 :名無したん(;´Д`)ハァハァ[sage]:2020/08/01(土) 06:15:54.44 ID:OLRpHxQyd
「でも勇者さま、魔王を倒すってのはわかりますけど、なんで悪い人から人々を守ろうってするんですか?」

「うっ……、それはだな……」

 様々な国、土地を周って思ったのだが、この勇者は人々、とくに子供に対して不幸になることが許せない性格をしており、事故や事件、獣に親を殺され残されてしまった子供を預けられる場所を探すまで連れ歩くことも少なくはない。

「笑わないでくれよ? 俺……過去っていうか、前世の記憶があるんだ」

「前世ってことは、昔の勇者さまのことですか?」

「あー……それとは違うんだけどな」

 首をかしげながら不思議そうに見つめる少女に思うところがあったのか、勇者は重い口を開いた。

「俺……前世で、人を殺しているんだ」

 一度決壊したダムが戻らないように、決心した勇者は言葉を止めない。

「車……って言っても知らないだろうな。馬車みたいなやつなんだけど、それで人を撥ねたんだよ。お酒を呑んでいたからよく覚えていないんだけど、かなりのスピードでぶつかったと聞かされている。
 一台の車に激突して、そのまま両親は死亡。残された子供、男の子だけが生き残ってしまったんだ。俺は逮捕され、出所するまでは知らなかったんだが、その子供に身寄りがなくて施設に引き取られて……
 ここからは噂なんだけど、施設の職員から性的な虐待を受け続けて、苦になって逃げ出した先で交通事故に遭って、その後は……」

「だから……だから勇者さま、子供に優しかったんですね」
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497 :名無したん(;´Д`)ハァハァ[sage]:2020/08/01(土) 06:16:40.98 ID:OLRpHxQyd
 その言葉を聞かされ、でも勇者の今の姿しか知らない彼女には責める言葉など思いつかず、ただ慰めるしかなかった。

「せめてもの贖罪、罪滅ぼしってやつだよ。俺がこうして勇者になって、もしかしたら魔王に殺されるかも知れないのに断れなかったのも、それが原因さ」

 歴代の勇者たちは魔王を討ち滅ぼしたとある。だけどそれは“語られた物語”でしかない。全滅してしまえば勇者が勝ったのか、負けたのかは誰も知らない。
 魔王に人々を滅ぼす気がなければ、あるいは勇者との傷が深く、それどころではなくなれば、魔王としての活動は中断。結果として魔王の脅威が訪れることはなく、勇者が倒したのだと人々は錯覚する。
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498 :名無したん(;´Д`)ハァハァ[sage]:2020/08/01(土) 06:17:06.57 ID:OLRpHxQyd
「その男の子、名前が……お前と同じなんだ」

「え?」

「男の子といっても、漢字が違うだけで女の子にも付けられてる名前でね。もちろん名字は違うんだけどさ」

 どくん。少女の胸の鼓動が早まっていく。

「確か……本名は――」

 どうして今まで忘れてしまっていたのだろう。
 その名前が鍵となり、全てを思い出した少女。

 男性職員から性的虐待を受け、交通事故により性別がわからないほど損傷が激しい少年は、神様の勘違いにより女性として新たな世界、新たな肉体を授かってしまった。
 犯人は今ものうのうと生きているのに、お父さんもお母さんも二度と帰ってこないのに。その犯人を殺すことが罪になる理不尽な世界。

 そして勇者を倒す――殺すことが認められた唯一の存在。



 ――――魔王。

「そうか……わたしが、わたしが勇者さまに……いや、お前と居るのとの意味がやっと分かったよ」


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