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JTAC
国家安全保障政策/国家戦略研究スレッドPart2

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国家安全保障政策/国家戦略研究スレッドPart2
946 :JTAC[sage]:2020/01/13(月) 19:34:49.87 ID:au8STqeB
こうしてWW2の陸軍は、WW1と同様に徴兵の巨大なマンパワーに依存した。
ただし、規模と言うよりも複雑性のためである。戦闘単位はひどく多様化した。
単純な歩兵大隊の装備は、小銃・手榴弾に加え二種類の迫撃砲、
二種類の機関銃、軽装軌車、対戦車砲、携帯対戦車火器、数種類の地雷を含んでいた。
機甲部隊の装備はこの数倍、水陸両用部隊と空挺部隊はさらに複雑であった。
マンパワーの大きな部分が戦闘部隊への補給等のサービスに吸収された。
全ての部分が技術的有効性に依存していた。
最良の兵士でも通信や輸送が途絶すれば絶望的だと感じるし最良の将軍は無線傍受で敵の意図を推測できる将軍であった。
国家安全保障政策/国家戦略研究スレッドPart2
947 :JTAC[sage]:2020/01/13(月) 20:46:13.28 ID:au8STqeB
軍隊に召集される男女の大くは平時と同じ活動、自動車整備、無線通信手、ウェイトレス、料理人に使用された。
召集されなかったものは一般市民としての活動、鉱夫、農作業、旋盤工、公務員が戦争に貢献できると考えられ残された。
市民の熱狂による大衆軍隊の時代は過ぎ去ったが、WW2はさらに深い意味で社会全体の闘争であった。

あらゆる個人が意思の疎通も妥協もあり得ない外国軍隊によって身体的生存も価値体系も脅かされていると感じた。
そのことは東部戦争で顕著だった。
第三帝国の指導者の目標は千年前の先祖の目標、新しい領土の植民と先住民の絶滅あるいは奴隷化であった。

事態を決定的にしたのは、将軍の技量や技術的奇跡よりも、ソ連国民の心身両面の巨大な資源をとことんまで動員するソ連政府の能力であった。
ナポレオンと同じようにドイツ軍は攻勢のモーメンタムに頼っていたので、
失敗すると資源の不足からソ連やアメリカの規模の敵に長期間の闘争を維持することはできなかった。
国家安全保障政策/国家戦略研究スレッドPart2
948 :JTAC[sage]:2020/01/13(月) 21:22:46.04 ID:au8STqeB
しかし、技術はナポレオンの時代とは異なる要素でもある。
もし、ドイツ人がジェット機の開発に今少し集中していたら、ミサイル技術に資源を振り向けていたら
ロンドンを荒廃させノルマンディー上陸作戦は失敗したかもしれない。
そして核研究がもう少し違った方向をとり政治的支持を得ていたら、
ソ連国民の英雄的努力もキッチナー軍へのマハティー族の突撃のような結末を辿ったであろう。

実際には最初の二発の原爆は1945.8にアメリカのよって日本に落とされた。
原爆は欧州が付け足しくらいに考えていた欧州外の紛争に、欧州外の一国により欧州外の一国に使用された。
これはコロンブス、ヴァスコダガマ以来の欧州の世界支配の終焉を意味した。
同時に大衆戦争の終わりを、工業諸国の総動員された国民が互いに全エネルギーを賭けて圧倒しようとする闘争の時代の終わりを意味した。

数年の内に有史以来の人類が使った全破壊力を上回る水爆が、地球上のどの地点にも分単位で到達する大陸間弾道ミサイルで投射できるようになった。
このような時代に専門的軍人の伝統的技量や、愛国的国民の忠誠を示す参加が、何か出る幕があるのであろうか?

一千年の間、欧州で理解され実行されてきた「戦争」はもう終わったのであろうか?
国家安全保障政策/国家戦略研究スレッドPart2
949 :JTAC[sage]:2020/01/13(月) 21:35:02.89 ID:au8STqeB
「ヨーロッパ時代の終焉」

自己充足的な欧州は1945年以降存在しなくなった。
モスクワ北方におけるソ連軍の反撃によって、その巨大な力が明るみに出され、
また日本の真珠湾攻撃によりアメリカが完全参戦するに至り、
これら両国は欧州に起源を持ちつつも、欧州全てを合わせた以上の大規模な資源を自由にする能力を有し、
新たな政治体制・経済体制を作り出すことになった。

この体制はカロリング帝国の東部国境沿いに欧州を分割した。
この状況が継続する限り、欧州のいかなる紛争も後ろ楯を巻き込むし、その逆も言えた。
欧州における戦争は地球規模の衝突内部の局地紛争に過ぎなくなった。
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950 :JTAC[sage]:2020/01/13(月) 22:19:38.63 ID:au8STqeB
二十世紀の最後の十年間にソ連の崩壊により二つの「超大国」への従属は終った。

ドイツは再統一され東欧はNATOに加わり復活した場合のロシアの脅威へのアメリカの保護を分かち合おうとした。
ただし、これは世界の舞台での軍事的行為者としての欧州の復活をもたらしはしなかった。
(フランスの姑息な試みは失敗した。)
二十六カ国の加盟国の拡大は意思決定の複雑さを生み出し、逆に弱体化した。
今日では、NATOはアメリカの無様な補助部隊として生き残っているが、それは軍事的な意味よりも政治的な意味である。

この軍事的な衰退の根底には欧州の文化における深刻な変化があった。
彼らはもはや戦争は人類の避けがたい運命どころか、重大な政策の具とも見なさなくなった。ああ
WW1の恐ろしい経験の後では、復讐心に燃えたドイツという例外のため1939年に嫌々ながら武器をとったが、
そのドイツもWW2の惨劇により隣国よりも一層平和を求めるようになった。
一方、ソ連はアメリカの核戦力に支援された復活したドイツへの恐怖のため動員を続けることになった。
同じようにソ連の侵略の恐怖により西欧諸国も、アメリカの保護の保障のためとはいえ、再軍備せざるを得なかった。

ただし、西欧の軍隊はアメリカの核反撃を保障する「仕掛け線」の役割まで後退し、
ソ連の侵略を数日持ちこたえる以上の期待はされなかった。
国家安全保障政策/国家戦略研究スレッドPart2
951 :JTAC[sage]:2020/01/13(月) 22:29:40.45 ID:au8STqeB
それでも核による虐殺の可能性は市民の激しい反対運動を巻き起こした。
その運動が核抑止という考え方に批判的なのは理解できるが、他に信頼できる代替案が無かった。

とにかくも抑止は機能し欧州は四十年もの間、平和状態を維持し、その間、非常に豊かになった。
一世代が軍事的事項について、積極的に敵対的では無いにしても無関心のまま成長した。

徴兵制は軍事的理由よりも、社会的・政治的理由で存続した。
(大多数の欧州諸国には専門的軍隊を信用しない歴史的理由がある。)
が、その負担を軽減するためあらゆる措置がとられ、市民を軍事化するよりも、軍隊を市民化した。
国家安全保障政策/国家戦略研究スレッドPart2
952 :JTAC[sage]:2020/01/13(月) 22:48:14.80 ID:au8STqeB
後に「対テロ戦争」と呼ばれる局面は、イラン革命から始まった。
ホメイニは、アメリカの影響からイスラムを浄化しようと全世界のイスラム教徒に呼び掛けた。
イランのライバルで世俗的指導者サダム・フセインのイラクが隣国イランに攻めこんだとき、アメリカは黙認した。

フセインは隣国クウェートにも領有権を主張し攻めこんだが、時期が悪かった。
ソ連崩壊のプロセス始まっており国連(つまりは連合軍)の実効性が例外的に回復していたのである。

アメリカは朝鮮戦争以来初めて集団安全保障の原則を実践できる多国籍軍を構成しイラク軍をクウェートから駆逐した。

この地域におけるアメリカの存在感の強化はイスラムの反発を招き、
サウジ出身のウサマ・ビン・ラーディンは「イスラムの聖域」からアメリカを追放しようと呼び掛けた。

2001.9.11。
ニューヨークの世界貿易センターを破壊し3000人の生命を奪った。
戦争の歴史は、それに伴い欧州も、新たなより気味の悪い時代に突入した。
国家安全保障政策/国家戦略研究スレッドPart2
953 :JTAC[sage]:2020/01/13(月) 23:05:39.08 ID:au8STqeB
欧州の人々は9.11の推移を怯えながら注視した。
隠謀家達がドイツでもテロの準備をしていた事実は、陰謀の超国家的性格と潜在目標を示していた。

しかし「対テロ戦争」というアメリカの宣言には懐疑的であった。
9.11は、既に欧州内で自分達自身のテロリストの活動の拡大したものだと考えた。
その活動は、軍隊よりも警察と情報部によって対処すべき「犯罪」と見なされた。

欧州はアフガニスタンでの作戦を支持し自国の軍隊を参加させた。
しかしイラクの作戦には懐疑的であった。
正当性をテロへの関連性を政治的賢明さを疑った。

実際の出来事が欧州側の正しさを証明した。
アメリカの意図と技術的優越性は文化的反発により大きく損なわれた。
この反発はアメリカ軍とイラク住民の関係を急速に蝕み、さらに大量の政治的判断ミスが重なった。
RMAにより戦闘には勝利できるかもしれないが、
技術的優越ばかりでなく政治的感性をも必要とする戦争には限られた価値しか持たなかった。
国家安全保障政策/国家戦略研究スレッドPart2
954 :JTAC[sage]:2020/01/13(月) 23:25:18.14 ID:au8STqeB
「対テロ戦争」を信じている人々は、欧州が現在、再び戦争状態にあると主張する可能性がある。
同意しない人々も平和が安定しているとは主張しないだろう。

レオン・トロツキーは、かつて「諸君は戦争に関心を持たないかもしれないが、戦争は諸君に深い関心を持っているのだ。」と述べた。

これは、戦争のことは忘れ去ったと信じている欧州人がよく考えるべき教訓である。
欧州は、もはや自分達の戦争を引き起こしたり、それを世界に広めたりはしないかもしれない。
だが、全地球的体制における広範囲な紛争に国境を閉ざすことはできない。
欧州はそこから離れることなどできない。
その体制の一部だからである。

(以上、「ヨーロッパ史における戦争」マイケル・ハワード著、奥村房夫・奥村大作訳の概要、
詳細は中央文庫の原書で御確認を。圧縮した部分も格調高く素晴らしい。)


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