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245 :出土地不明[]:2016/08/06(土) 15:33:24.34 ID:hjxr+CCa - 「お悔やみに行くのよ、つらいわ」。そう言ってお隣の奥さんが坂をおりて行った。
その喪服のうしろ姿を見て「黒っていいな」と思った。 喪服の女が美しく見えるのは 定評があるけれど、しかし、潤んだ心と伏せたまぶたがあってこそ、はじめて黒の喪服が ものを言うので、黒は気持ちで着る色だと、つくづく思う。 白も黒も、のっぴきならない色である。白は気高く潔癖で、黒は内にひかえて沈む色。 西洋では粋な色とされている黒も、日本では政治の黒幕、腹黒いやつ、相撲の黒星、 犯人は黒か白かなどと、ろくな形容には使われないし、せんじつめれば抹香臭く、 しょせん黒は凶に通じる色である。 着こなし上手といわれる人にも、黒はなかなかの難物である。若い人には似合わないし、 乱暴に着ればやぼになる。人生の雨風をくぐった年輪を、黒一色で生かすか殺すかは、 その人のセンス一つである。つまり、黒は一癖も二癖もある人の着る色といってしまえば、 黒が似合うというのは、あまり自慢にもならないことかもしれない。 いずれにしても、黒を着るのはちょっと「かくご」のいることである。
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