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190 :Don't lose your self 1/7[sage]:2010/04/30(金) 13:43:24 ID:KaU0Y6Qr0 - モニターから放たれる、仄白い光がベテランの横顔を照らしている。
昼間の戦闘の報告書を早々に書き上げた彼は、何をするでもなく虚空を見つめていた。 モニターに写された報告書には、味方の軽微な損害と大きな戦果が、事務的に書かれている。 部隊を率いる彼にとって、喜ぶべきことのはずだが、その表情は硬い。 部屋に一人きりでいながら、まるで、感情を隠すかのようである。 そんな時間が5分も続いただろうか。やがて、彼は軽く目を瞑り、頭を振った。 手早く報告書を保存すると、彼はおもむろに椅子を離れてキャビネットを開く。 手にショットグラスとボトルを無造作に掴み、ソファに乱暴に座った。 ボトルのコルクを引っこ抜き、逆さまにしたボトルからは、酒が勢い良くグラスに注がれる。 しかし、グラスの半分ほどで酒は尽き、後は雫を垂らすのみであった。 空になったボトルをまじまじと見つめてから、彼は、半端に注がれた酒を一息に喉に流し込み、直ぐに部屋を後にした。
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191 :Don't lose your self 2/7[sage]:2010/04/30(金) 13:44:20 ID:KaU0Y6Qr0 - この施設には、バーがある。といっても、道具一式にカウンターがあるばかりで、先日まで肝心のバーテンダーと酒は無かった。
最近施設に異動してきたメカニックの青年が、真似事を始めたのだ。 不定期に開くこのバーは、所員や兵士の憩いの場として受け入れられている。 この日、折り良く店は開いていた。 二人ほどの中年の所員がゆっくりと酒を楽しんでいるのみで、他に客は見られない。 軽快なジャズが控えめに流れる店内は間接照明で照らされ、落ち着いた雰囲気を醸し出している。 「強いのを、頼む」 言いながらベテランは、スツールに腰を掛けた。 バーテンダーは、不躾な彼の態度に気を悪くする風も無く、酒を選び始めた。 「隊長さんがいらっしゃるのは、初めてですね」 背中越しにバーテンダーが話しかける。 「今日は如何されました?」 「部屋の酒が切れてね。飲みたい時に飲めないのが我慢できなかった」 「そうでしたか。今まで一度も来て頂けなかったので、てっきりお酒は召し上がらないのかと思っていました」 何本かのボトルを手に、バーテンダーが振り向く。 「今日はお近付きの印に、珍しいお酒を差し上げたいと思います」 バーテンダーは、ベテランの前にそれらのボトルを並べて、得意げな顔をした。 「これは」 「左端。サウザのビアンコをストレートで。レモンと塩もくれ」 喋ろうとしたバーテンダーを遮り、ベテランはにべも無く注文した。
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192 :Don't lose your self 3/7[sage]:2010/04/30(金) 13:45:15 ID:KaU0Y6Qr0 - 「よっす。邪魔するぜ」
やけに砕けた口調で入ってきたのは、熱血だった。 「いや〜、今日は俺、大活躍でさ〜。黄金武勲までもらって、懐暖かいぜ」 跳ねる様な足取りでカウンターまで寄ってきた彼は、ひどく上機嫌だった。 「あれ?」 浮かれた彼は近くまで来て、ようやく自分の隊長が横にいることに気が付いたらしい。 「おっさんも飲んでたのか? 誘ってくれりゃ良いのによ」 「俺が何時、何処で飲もうと、俺の勝手だろう」 「んだぁ? おっさん、機嫌悪い?」 いつもは威厳を感じさせながらも、温かみのあるベテランしか知らない彼は、ベテランの突き放すような言葉に面食らったようだ。 「つれねぇな。こういうときは同じ酒を飲むに限るね。おっさんは何飲んでんの?」 それでも尚、明るく話しかけることができるのは、一つの才能と言うべきか。 ベテランの手には、試験管のような細長いショットグラスが握られ、前に置かれた皿にはレモンの皮があった。 ベテランは、その大きな手で包むように持っているグラスを軽く弄んでから。 「メスカルだ」 と答えた。 「美味い?」 「不味いな」 興味津々で尋ねた熱血に、またも淡白に返すベテラン。 先ほどから予想外の反応ばかり返されている熱血は、たまらずバーテンダーの方を見る。
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193 :Don't lose your self 4/7[sage]:2010/04/30(金) 13:46:11 ID:KaU0Y6Qr0 - バーテンダーは苦笑と共に肩をすくめ、一本のボトルを熱血の前に置いた。
「サウザのビアンコ。テキーラのシルバーと言った方が分かりやすいですね」 「へー、俺テキーラって飲んだことねぇや」 「爆発事故以来、ほとんど作られていませんからね。これは、復刻版です」 「どこの酒だっけ?」 「メキシコです。今は汚染が進んで、国の体を成していませんが、これはメキシコを懐かしんで作られました」 しみじみとボトルを眺める彼の眼は、愛しい者を見る眼に似ていた。 「是非、昔のスタイルで飲んで欲しいと思います」 「じゃあ、貰おうかな」 熱血の期待に満ちた注文に、バーテンダーは嬉しそうに応えた。 程なくして、ベテランの手にあるものと同じグラスに入ったテキーラと、皿に乗った塩とレモンが差し出された。 「まず、左手でレモンを持って下さい。それから親指の付け根に塩を置いて、右手でグラスを持って下さい」 熱血はバーテンダーの言うままに動き、左手に塩とレモン、右手にテキーラを持った。 「で、塩を舐めて、レモンを齧って、テキーラを一気飲みして下さい」 「い、一気?」 バーテンダーの少々物騒な発言に、熱血は驚いた。 「度数40%で1オンス(30ml)ですから、アルコールの量はビール一杯と変わりませんよ」 「よ、40度か」 「無理に、とは言いませんが?」 「いや、男は度胸。何でも試してみるもんさ」 言って、熱血は言われた手順で、テキーラを飲み干した。 「ぐあっ! 効くなぁ。でも、意外と甘いし、飲みやすいんだな。銘柄は何だっけ?」 「サウザ。テキーラを代表する銘柄の一つで、これはその中のシルバーです」 「おっさんが言ってたメスカルってのは?」 「同じ物ですよ」 良く分からない回答に、熱血は首を傾げる。
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194 :Don't lose your self 5/7[sage]:2010/04/30(金) 18:18:13 ID:KaU0Y6Qr0 - 彼の疑問に答えたのは、今まで黙りこくっていたベテランだった。
「特定の産地と原料によって、丁寧に作られたメスカルを、特別にテキーラと呼ぶんだ」 ようやくまともに口を利いた彼は、やはり機嫌が悪そうだ。 「じゃあ、メスカルなんて言わずにテキーラで良いじゃん。おっさんも人が悪いぜ」 「少なくとも、俺にはテキーラでは無いのでな」 「コダワリってやつか? 今日のおっさん、ちょっと鬱陶しいぜ?」 言われたベテランの、グラスを握る手に力が篭もる。 「今日の戦闘は快勝。怪我人も無く、報酬もドッサリ。機嫌が悪くなる理由が分らねぇな」 「お前には、これがメスカルだという事も、どうでも良いことなのだろうな」 言われて、今度は熱血の目つきがきつくなる。 場の空気は一触即発。何かの拍子に殴り合いでもし始めかねない様子だ。 「ありがとうございました」 その時丁度、バーテンダーが先客の所員2人を送り出した。 礼でも言われたのか、彼の顔には満面の笑みが在った。それが営業スマイルなどではないことは、2人にも分った。 その無邪気さに毒気を抜かれた彼らは、顔を見合わせて苦笑する。
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195 :Don't lose your self 6/7[sage]:2010/04/30(金) 18:19:18 ID:KaU0Y6Qr0 - 「で、今日のおっさんはどうした? らしくないぜ」
「らしくない・・・・か。今日は、そうなんだろうな」 熱血は改めて、ベテランに尋ねた。今度は返事が返ってきた。 「で、どうした?」 「今日の戦闘で、単騎突撃を繰り返した敵がいただろう。あれは俺の、古い知り合いだ」 「そんなの分かるのか?」 「鹵獲品として押収したブラストの中で死んでいた」 場を、再び沈黙が支配する。 ジャズとバーテンダーが忙しなく食器を洗う音だけが流れている。 先に口を開いたのはベテランだった。 「誰が殺したかはどうでもいい。戦場でそんな倫理を問う気もない」 熱血は、黙ったまま聞いている。 「大体、奴とは友人という程でもなかった。同じ部隊に居て、時々話かけられるくらいだった。明るくて、酒が大好きだった」 ベテランは、忘れていたことを思い出すようにポツリ、ポツリと語り始めた。 「いつも賑やかで、思いやりがあって、自分の故郷を誇っていた」 彼はグラスを目の高さまで持ち上げて、目を細めた。 「もしかして、メキシコか?」 「そう、メキシコだ」 彼は続ける。 「一緒に飲むと、奴は周りに言っていたよ。どいつもこいつもテキーラと言うが、メスカルがお高くとまったところで変わりはしないってな」 「だから、おっさんもテキーラじゃなくて、メスカルか?」 「それもあるが、それだけじゃない。原料が同じでも、産地が違うんだ」 「そうか。ニュードで・・・・」 「そう。ニュードで原料のリュウゼツランが作れなくなったからな。このボトルの原料は培養施設で作られたものだろう」
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196 :Don't lose your self 7/7[sage]:2010/04/30(金) 18:20:37 ID:KaU0Y6Qr0 - ベテランは持ち続けていたグラスを置いて、天井を仰いだ。
「自分を省みないような無茶をする奴ではなかった。死に場所を探していたとしか思えん」 「テキーラが無くなったから? まさか」 「それは分からん。だが、国が死んだ。土地も死んだ。人も死んだ。酒まで死んで、奴の心に何が残ったか・・・・」 「残るもの、か。もし、その人がこの酒の事を知っていたら、どうなったかな?」 「それも知らん。奴が自暴自棄になっていた事以外は、全て推測だ」 ずっと前を向いて話していた彼が、ゆっくりと熱血の方へ向く。 「失ったものを思い出すなとは言わん。しかし、引き摺られるな。必ず自分を残せ」 「さっきまで、おっさんが引き摺られてたくせに」 「そうだな。俺も今日の件で危うく、ああなるところだった」 ようやく、ベテランの口元が緩んだ。 それを見て、熱血も安心したようだ。 「もう一杯いこうぜ。弔い酒の次は、祝い酒だ。奢るぜ?」 「こいつめ、年上に見栄を張るな。しかし、そうだな、飲むか」 バーテンダーは丁度、BGMを入れ替えるところのようだ。 「マスター、メスカルをもう一杯だ!」 今まで生きてきて、懐かしい酒の味を思い出したベテラン。 「マスター! テキーラ頼むよ!」 今、生きていて、新しい酒の味を知った熱血。 「はい。少々お待ちを」 出てきたのは、同じセットが2つ。 「乾杯だ」 「おう、乾杯」 そして、2人はグラスを空にした。 〜END〜
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197 :Don't lose your self おまけ[sage]:2010/04/30(金) 18:21:47 ID:KaU0Y6Qr0 - 「お会計はこちらになります」
「「高ッ!?」」 「一応、レアボトルなので。空けられるとは、思いませんでしたが」 「・・・・奢り、だったな」 「え、ちょ待っ。ノーカウント、ノーカウントだ!」 えんど
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198 :ゲームセンター名無し[sage]:2010/04/30(金) 18:24:54 ID:KaU0Y6Qr0 - 途中、連投規制が怖くて間空けました。
長い上に、自己満のウンチク入りの平々凡々なSSですが 指摘、感想、突っ込み等していただければ幸いです。
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200 :ゲームセンター名無し[sage]:2010/04/30(金) 19:43:25 ID:KaU0Y6Qr0 - 早速のレス、ありがとうございます。
テキーラの原料はサボテンと思われがちですが、竜舌蘭といって、ユリ科の植物です。 アロエに似ていて、葉肉はパイナップルに例えられます。 なので、テキーラも結構甘さを感じますが、銘柄によって様々です。 エグみが強いものも有るので、一概には言えません。 SSにあるサウザはスッキリ系ですが、対抗馬のクエルヴォは芳醇系。 熟成させたゴールド(レポサド)やアニェホは甘みと香りが増してブランデーっぽくなります。 テキーラはフルーツを使ったカクテルに良く合いますよ。
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202 :ゲームセンター名無し[sage]:2010/04/30(金) 20:58:30 ID:KaU0Y6Qr0 - >>201
ですよね! マスターズガイドで、ゴードンがイギリス人ということなので、 今度はスコッチで書きたくなってきました。 追記:調べたら竜舌蘭は突然変異が起き易く、今はユリ科を離れてリュウゼツラン科になったようです。 間違った情報を書いてごめんなさい。
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