- ラビン・ユー
812 :見ろ!名無しがゴミのようだ![sage]:2011/04/18(・・ 12:32:19.27 ID:jhQBy28k - 取り敢えず、まどかは周りの流れに逆らわないよう身と心を委ねる。
今はベッドの上で不思議と冷静にいられる。 (夢じゃないよね?…春日クン、あかね、きっと会えるよね?) ぼんやりと天井を眺めながら考えていた。 午後4時を回り… トントン。 「はい。」 「まどかさん…。」 ひかるがうつむき加減に入って来た。 勇作も覗いている。 「ひかる!勇君も…入んなよ。」 「あんたは外で待ってて!」 一緒に入ろうとする勇作をひかるが一括した。 「じゃ、俺、外で待ってます。」 (ひかる…何もそんな言い方しなくても…) まどかはちょっとブルーになる。 「先生達が騒いでたのを立ち聞きしてしまって…大丈夫ですか?」 「うん。」 「でも、まどかさんのすることには、毎回驚かされるなあ。」 「そ、そうかなあ…」 起きようとするまどかを制するように 「あ、寝てて下さい。」 「え?あ、うん。」 まどかは自分とひかるの関係がどのようになっているのか測りかねた。 病室に沈黙が流れる。
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809 :見ろ!名無しがゴミのようだ![sage]:2011/04/18(月) 11:25:04.92 ID:jhQBy28k - 「おにいちゃん、おにいちゃんってば!」
妹たちにゆすられて目を覚ます。 気付くとじいちゃん家の居間に寝かされていた。 (俺…あ、鮎川は?) 「恭介、お前たちのせいで大変じゃぞい。」 「おやじは?それと…あかね…」 「お父さんはおばあちゃんと『辻褄合わせ』に出かけたよ。あかねちゃんは…」 「ほれ、あそこじゃ。止まっていたワシを想像しただけで肩が凝るわい!」 起き上って見ると、『おでこ』に呪文が書かれた紙を張られ正座させられている。 (あかね、スマン!) 恭介は心の中で手を合わせた。 一方まどかは… 大勢のヤジ馬に囲まれてホームに倒れていた。 「大丈夫ですか!大丈夫ですか!」 駅員・ェ必死に声を掛けている。 飛ばされた際、どこかで打ったのか、額からちょっと出血している。 間もなく駅員に誘導され救急隊が駆け付けた。 しかし、まどかはムックと起き上ると周りを見渡し 目尻に流れ込む血を手で拭うと、じっと考えた。 (あれ?止まってたのに…春日クン…あかね…?) 「おい、君!動かないで!」 隊員たちが無理しないよう促すと、まどかはコクリと頷いた。 彼らはまどかの様子を観察して、仲間に連絡している。 無線を通して交わされる会話が物々しい。 もう一人の隊員が目撃者から様子を訊き出すのだが 大事故の割に彼女がケロリとしていることに不審がる。 まどかは彼らの目を盗んで腕時計で日付と時間を確かめると、 振り返って駅の電光掲示板のそれと比べた。 (9月6日、12時10分?…腕時計が2時間以上進んでる! ということは、やっぱりあかねが言った通り…。)
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810 :見ろ!名無しがゴミのようだ![sage]:2011/04/18(月) 11:50:26.74 ID:jhQBy28k - 取り敢えず、まどかは頭を固定されたままストレッチャーに移された。
そして、そのままホームを移動し、駅前に着けられている救急車に乗・ケられると 3次救急の総合病院へと搬送された。 病院に着くや処置室に移されるとすぐに、バイタルチェック、採血、 ルート確保がなされ、救急医の一人がやって来た。 「どこか痛いところはないかい?今日は何日かわかる?今居る所は? 自分の名前、生年月日は言える?住所は?働いてるの?」 まどかは矢継ぎ早な質問の一つ一つに丁寧に答える。 そして、看護婦さんとドクターが顔を見合わせた。 「ええ?高校生なの?!」 「…はい。」 「じゃあ、保護者の連絡先を教えてくれるかなあ?」 (……) まどかは親が遠方に居ることを理由に、 保護者として姉に連絡をしてくれるよう頼んだ。 (お姉ちゃん相当怒るだろうなあ…今度という今度は。) まどかの落ち着いた態度と受け答えの正確性から 緊急性は高くなさそうとは思えるのだけれど… 「まあ、意識もはっきりしてるし、目立った外傷もなさそうだけど… 取り敢えず、検査だけはしておくから。事故の状況が状況だけにね。」 まどかは検査室へ移されると病衣に着替えるよう言われ、すぐさま エコーで臓器損傷がスクリーニングされ、引き続きレントゲンやCTで 骨折や頭蓋内損傷の有無が調べられた。 結局、目撃者達の言うことに符合せず、彼女の体は全く問題なかった。
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811 :見ろ!名無しがゴミのようだ![sage]:2011/04/18(月) 11:55:08.66 ID:jhQBy28k - 検査が一通り終わった後、まどかは処置室から個室の病室へと移された。
駅では現場検証が行われ、警察が目撃者から状況を訊いている。 また、病院では刑事たちが医師から病状聴取をしていた。 2時過ぎには、連絡を受けた学校の校長と教頭、 そして担任と生活指導の先生がやって来た。 事件性がないことと、おでこのキズの他は全く怪我をしていないこと、 新幹線にも問題はなく、15分程度の遅れを回復してダイヤは現在正常通り 運行されていることから、事態は一気に終息した。 「ご迷惑をおかけしました。本当にごめんなさい。」 しおらしく謝罪するまどかに怪訝な表情の先生達。 (先生達も内心怒ってるよねえ…あたし不良に戻ってたみたいだし。) しかし、彼女が関わった人たちの記憶から、まどかの奇行は消されていた。
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813 :見ろ!名無しがゴミのようだ![sage]:2011/04/18(月) 12:50:16.78 ID:jhQBy28k - ひかるが口を開いて
「先輩は…先輩は来てないんですか?」 「え?ああ、え〜っと…学校来てなかった?」 まどかの記憶では、今日引っ越しで登校していないはず。 「あたしは知りませんよ。知る訳ないじゃないですか…。 こんな時に何やってるのかなあ?」 (え?…ひかるが知らないってことは やっぱり春日クン『引越し』してないってこと?) まどかは少し期待する。 (じゃあ、ひかるとの関係はどうなってるのかしら?この様子じゃ…) 少し投げやりなひかるの口調に…あの日『受け止め』てから 修正されたと思っていた自分たちの関係が、 再びこじれているらしいことを感じ取る。 (あ〜、やんなっちゃう…。) まどかはベッドの上でため息を吐いた。 「まどかさん、全然大丈夫そうで良かったです。あたし、帰ります。 先輩に…宜しく伝えて下さい。それじゃ…」 (なによ、ひかる。あたしに会いに来てくれたんじゃなかったの?) ひかるが出て行った後、思いっきり溜息を吐いた。 まるで息が詰まるかのような・條ヤだった。 (あの劇を観て…あたしが逃げようとして…ひかるが落ちて…) ひかるが出て行ったドアの方を見つめながら考えている内に まどかは深いまどろみへ落ちて行った。
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816 :見ろ!名無しがゴミのようだ![sage]:2011/04/18(月) 13:11:18.83 ID:jhQBy28k - 同日、夕刻には姉が到着した。
まどかは事故が事故だけに、明日までの入院を余儀なくさせられた。 「どう?目、醒めた?」 「お姉ちゃん、いつ来たの?」 「さっきよ。ところであんた、すごい強運の持ち主ね。」 呆れたように口にする。 「ごめんなさい…迷惑ばかりかけて。」 「いいわよ、『慣れてる』から。でも良く助かったわねえ…」 ため息交じりに言う姉の顔をまともに見られなかった。 姉は警察に・トばれ、駅のホームにある監視カメラの記録で事故の一部始終を 一緒に確認するよう言われた。 彼らはモニターの中のまどかの行動から、衝動性自殺の線で調べを進めている。 そこで、まどかの姉からまどかの性格や生活、近況を訊き出そうとするのだが、 姉は妹がとてもそんなタイプではないと一蹴する。 事情を聴取する際、リエゾン要請で同席した精神科医も、 『今』の彼女の精神状態と言動から『その線』は考えにくいけれど、 取り敢えず、もう少し様子を見ておく必要があると判断した。
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817 :見ろ!名無しがゴミのようだ![sage]:2011/04/18(月) 13:40:38.49 ID:jhQBy28k - 「ねえ、一体何があったの?あんた、血液中のアルコールや薬物まで
測定されたんだってよ。」 「え〜!んな訳ないじゃん!」 (うわ〜…ビーチでつられて飲むとこだったわ。) 思い出して冷や汗をかくまどか。 「で、ホントはどうなのよ?授業中飛び出したって聞いたけど。」 「うん…いろいろあって、それですごく急いでて…慌てたはずみと言うか…」 まどかはその先を言い淀んでしまう。 (誰に言っても信じてくれないよねえ…それに、言えないし。 でも、『さっきの』が夢じゃ無ければ… 春日クン達って、すごい力持ってるんだ…) ついさっきまでの体験を思い出す度、詳細まであまりにも生々しく脳裏に蘇り とても夢とは思えないという確信めいた期待に胸を躍らせた。 (夢じゃなけりゃ、凄いことだよね?) そんな彼らと知り合えたことに、少しワクワクしてくる。 「ちょっと、まどか!なにニヤニヤしてんのよ!んもう!」 お姉ちゃんに頭を小突かれた。 「あ〜、病人に手を上げたなあ?」 「あんたのどこが病人よ!」
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818 :見ろ!名無しがゴミのようだ![sage]:2011/04/18(月) 13:43:27.68 ID:jhQBy28k - 早速夕方のニュースで報じられている。
内容は 『都内私立高校在学中の18歳の女子生徒が誤って新幹線と接触事故。 本人は軽症で意識もしっかりしており、警察では事故の原因を調査中。 これがその時駅のカメラが撮った衝撃の瞬間です。』 帰り支度をした恭介たちは、じいちゃん家で夕食を摂っていた。 「お兄ちゃん、やってるよ!」 家族はテレビに釘付けになっている。 画面では、コマ送りで新幹線に近づく・ワどかの姿が! 「危ない!」 くるみとまなみが声を上げる。 ぶつかった瞬間、まどかの体はくるりと回転してホームに倒れた。 『もう一度、ご覧頂きましょう。』 みんなは一斉にばあちゃんを見ると、気づいてにっこりほほ笑んだ。 「可愛い孫のピンチだったからねえ…」 「ばあちゃん、有難う!」 「おばあちゃん、すっご〜い!!」 やんややんやの賑わいの中 『グルグルグル〜』 あかねのお腹が鳴っている。
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819 :見ろ!名無しがゴミのようだ![sage]:2011/04/18(月) 14:54:46.51 ID:jhQBy28k - みんなの視線があかねに集中する。
彼女は正座は解かれたものの、かれこれ6時間近く、 身動きを許されないで横にされていた。 しゃべれないし、目も開けられないけど、ちゃんと解っている。 一也が覗き込んで、ほっぺをツンツンする。 (コ、コラ!一也!!) 表情一つ変えない姉の姿に 「姉ちゃん可哀そうだよ。」 まなみとくるみも心配し出した。 「お父さんとおじいちゃん、遅いなあ。あかねちゃん可哀そうだよ。」 それを聞いて、ご飯をモグモグ食べながら恭介は 「おでこのお札取っ・トみれば?」 まるで他人事のように言う。 (お、お前は食うなーー!!) 表情を変えず静かに寝ているように見えるだけで、頭の中は荒れている。 その時 「今帰ったぞ〜。」 「おかえりなさ〜い!」 じいちゃんが居間に上がって来ると 「あかね、許しが出たぞ。ほれ!」 おでこに張られたお札がひらひらと舞い上がった。 がばっと身を起こすと、恭介を睨みつける。 慌てて 「お、おい…待て!」 お茶碗を持ってうろたえる恭介に 「うるさい!」 いきなり飛びかかって首を締めだした。 「お前、自分だけ旨そうに食いやがって!!一体誰のせいで!」 「ぐ、ぐるじ〜!」 『グルグルグル〜…』 あかねはその場に力無くへたり込んだ。
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820 :見ろ!名無しがゴミのようだ![sage]:2011/04/18(月) 14:57:07.25 ID:jhQBy28k - その頃、病院では
「まどか、報道関係の取材全部断っておいたから。」 「有難う。」 「夕食来てるけど食べないの?」 「うん…あんまりお腹すかないや。」 「何か買ってきてあげようか?」 「ううん、今日はもう寝る。何だか…疲れちゃった。」 「じゃあ、今日は私あんたの所に泊まるから。」 「……」 「まどか?」 見ると、まどかは寝息を立てて眠っている。 (疲れちゃったか…) 妹を起こさないように病室の電気を消してそっと出ると 詰め所に寄って連絡先を伝え、今日は一旦引き上げる旨伝えた。 病院の玄関を出て振り返り建物を見上げ (それにしても…どんだけ病院好きなの?) ちょっと呆れ顔のまま、タクシーに乗り込み帰宅する。 まどかの家に着いた。 玄関を開けると 「うっ!何?この匂い!」 リビングに行き、辺りを見回すと勉強部屋に駆けあがる。 (まどかのヤツ!)
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826 :見ろ!名無しがゴミのようだ![sage]:2011/04/18(月) 23:22:23.09 ID:jhQBy28k - 他人が見ても不愉快な表現は止めませんか…?
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