- イリヤの空、UFOの夏 その11
898 ：園原電波新聞部号外[]：2012/08/31(金) 00:38:22.13 ID:hOlp6wa00 - イリヤの空、ＵＦＯの夏のアフターストーリー
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- イリヤの空、UFOの夏 その11
899 ：園原電波新聞部号外[]：2012/08/31(金) 00:42:13.92 ID:hOlp6wa00 - 伊里野は実は生きていた。
伊里野が戦争を終結させたと同時に、１つのプロジェクトが国家規模で
始動した。プロジェクトはブラックマンタの技術を世界的に放棄すること。
併せてパイロットを抹消するのではなく普通の人間に戻すこと。
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900 ：園原電波新聞部号外[]：2012/08/31(金) 00:49:36.64 ID:hOlp6wa00 - ブラックマンタが対人間用の兵器として今後も利用されれば、
恒久的な平和は訪れないことを最終戦争の前に各国家が集結し、
ついに議論、条約を締結した。そして戦争が終結した時、各国家は条約
通り、エイリアンがもたらした技術の破棄。及びパイロットが万が一今後
生み出された時の対処が可能なように現時点のパイロットを普通の人間に
戻す。そのための国家間協力が実行された。
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901 ：園原電波新聞部号外[]：2012/08/31(金) 00:55:28.99 ID:hOlp6wa00 - 伊里野はブラックマンタごと墜落した。
墜落を軍は捕捉していたが、ある地点でロスト。
椎名はその地点があらゆる電波や電磁気が入り乱れ、上陸しない限り
状況を捕捉できないロストエリアであることに気付く。
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902 ：園原電波新聞部号外[]：2012/08/31(金) 01:00:34.76 ID:hOlp6wa00 - ロストエリアが発生したのは数年前、ブラックマンタのエース
パイロット。ジェイミー・ザッカリーが死亡した時期と重なる。
そこに伊里野は墜落した。
椎名が救出に向かうように上官に申告するが、手段がないことを理由に
却下される。そこに浅羽に撃たれた榎本の救護にあたっていた先坂が
駆け寄ってくる。
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903 ：園原電波新聞部号外[]：2012/08/31(金) 01:03:44.96 ID:hOlp6wa00 - 榎本からの伝言内容を椎名に伝える。電子機器が一切通用しない
ロストエリアに行くにはヘリではだめだ。エンジンも停止する。
何より時間がない。ブラックマンタの技術を流用した一度も使われなかった
ジェット機がある。それを使え、と。
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905 ：園原電波新聞部号外[]：2012/08/31(金) 01:06:38.48 ID:hOlp6wa00 - 椎名は上官達には伝えず、先坂に手伝わせ、6年ぶりの空へと飛び立つ。
それは榎本が用意した伊里野への最後の道だった。
椎名は絶対の覚悟を持って伊里野の救出に向かう。
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906 ：園原電波新聞部号外[]：2012/08/31(金) 01:14:47.02 ID:hOlp6wa00 - 伊里野は意識を失いつつあり、ロストエリアの中でブラックマンタの壊れた
コクピットにもたれかかっていた。
ヘルメットのＨＤＤが故障し、視界に広がるのは白い光だけ。
体がピクリとも動かず、ヘルメットを外すことさえできない。
考えるのは浅羽のこと。死んでいった仲間たちのこと。
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907 ：園原電波新聞部号外[]：2012/08/31(金) 01:19:06.38 ID:hOlp6wa00 - そのとき、伊里野の名前を呼ぶ声が聞こえた。
声は1人のもののようにも聞こえるし、何人もが呼んでいるような
気がする。伊里野は意識をはっきりすることができないまま、
声に応えようとする。声は徐々に大きくなっていき、白い視界の中には
4人の人影が見えたような気がした。直後に視界を覆っていた白色が消え、
変わりに目に涙をためた椎名の姿があった。
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908 ：園原電波新聞部号外[]：2012/08/31(金) 01:25:31.21 ID:hOlp6wa00 - 一方、浅羽はタイコンデロガから帰還し、しばらくの間入院していた。
夏休み最後の日にプールで打たれたミストの浄化のためだ。
浅羽は病室を訪れる友人や家族に言葉を返す気力はなかった。
伊里野を守れなかったこと。人を撃ったこと。
自身の非力や矮小さをかみ締め、もう動くことすらできなくなっていた。
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909 ：園原電波新聞部号外[]：2012/08/31(金) 01:29:44.73 ID:hOlp6wa00 - 伊里野を利用した軍を憎み、榎本を罵倒し、そして何より伊里野を戦争に
向かわせた自身を呪った。
退院後も浅羽は学校に通いながら人とコミュニケーションをとらなくなった。
戻ってきた水前寺や晶穂にも事情を何も話さなかった。
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910 ：園原電波新聞部号外[]：2012/08/31(金) 01:34:53.30 ID:hOlp6wa00 - 保険の先生は黒田先生になり、校長はいなくなり、シェルターが取り壊される
ことになった。
浅羽はシェルターが取り壊される前日の夜に、シェルターに忍び込んだ。
シェルターはセキュリティが何も発動しておらず、浅羽は以前伊里野と
ゲームをした場所にきた。
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911 ：園原電波新聞部号外[]：2012/08/31(金) 01:40:32.62 ID:hOlp6wa00 - そこで浅羽は黒い箱を見つけた。
箱にはあの日伊里野としたゲームと薄い水晶のような金属球を発見した。
それは伊里野とした「BARCAP」であり、伊里野の手首についていた金属球だった。
浅羽はゲームに以前はなかった付属の装置を発見し、金属球がはめられそうなくぼみを見つけ、
それをあてがってみた。
それは伊里野の心が文章となってゲームに投影されるシステムだった。
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912 ：園原電波新聞部号外[]：2012/08/31(金) 01:47:01.45 ID:hOlp6wa00 - 伊里野の心は、あの日自分を助けてくれた浅羽に感謝していた。
プールで一回。そしてシェルターでも自分を守ろうとしてくれた浅羽に。
浅羽はシェルターに忍び込んでいることも忘れ泣き叫んだ。
それを入り口の影から水前寺が見ていた。
伊里野の名を何度も呼ぶ浅羽を見て、上を向き、何も思い出せず、水前寺は歩き出した。
すべてを思い出すために。
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914 ：園原電波新聞部号外[]：2012/08/31(金) 02:06:57.44 ID:hOlp6wa00 - 水前寺は町中を歩き回った。記憶を消された。それは大きな問題ではある。
だが、それよりも重大なことがあった。
園原電波新聞部の特派員達のことだ。
伊里野特派員は消え、須藤特派員は誰もいない部室に通いつめ、浅羽特派員は・・・。
記憶はなくとも、みなのためにしなければならないことはわかっていた。
まずは記憶を取り戻さねばならない
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915 ：園原電波新聞部号外[]：2012/08/31(金) 02:10:51.12 ID:hOlp6wa00 - 記憶を取り戻す手段をいくつか試みたがすべて無駄だった。
催眠術までも手を出したが徒労に終わった。
そして、当たり前のことにようやく思い至った。
記憶を消されたのなら、消した奴にアクションをかければいい。
幸い消された記憶はごく一部のものだ。
軍のメインゲートや各サブゲートはすでに当たった。防空壕も入り口はすでに
潰されていた。となれば。
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916 ：園原電波新聞部号外[]：2012/08/31(金) 02:31:15.80 ID:hOlp6wa00 - 水前寺が向かったのは帝都線市川大門駅の女子トイレだった。
懐かしいもので、女装までして潜入捜査を行ったのがついこの間だとは。
潜入当時は幽霊暴きにかまけていたせいで無視してしまったが、この場所は
明らかにおかしかった。トイレに鏡はつきものとはいえ、なぜ姿見のような大きな鏡があるのか。
そう、ともすれば人が通ることができるほどの鏡が。
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917 ：園原電波新聞部号外[]：2012/08/31(金) 02:36:16.09 ID:hOlp6wa00 - このトイレの大きさに見合わない鏡が件の幽霊騒ぎに繋がったのだと思う。
そして、潜入時に自分はこの鏡にもカメラを向けた。そしてその時確かに見たのだ。
鏡の中に自分以外の誰かがフラッシュに浮かび上がるのを。
あの後は警察沙汰になったし、肝心のフィルムは須藤特派員に焼却されてしまったが、
あの影が今でも気になるのだ。
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918 ：園原電波新聞部号外[]：2012/08/31(金) 02:41:07.09 ID:hOlp6wa00 - 今はこの世ならざる何かを期待してはいない。人が通れるほどの姿見。
フラッシュに浮かび上がった影。影はカメラに対して背を向けていた。
そう、逃げるように。しかし後ろにはすぐに流しがある。走るようなスペースはない。
この状況から導き出されるのは。
ビンゴだ。
その時、鏡に映る自分の姿に何かが近づいてきていた。
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928 ：園原電波新聞部号外[]：2012/08/31(金) 23:53:46.55 ID:hOlp6wa00 - その日から、一週間。水前寺は学校を休んだ。
学校に入った家族からの連絡は今後の進路に関わることで休む。
その情報を島村清美から聞いた須藤晶穂はそんなに驚きはしなかった。
浅羽にも伝えたが、なにやってるんだろうね。の一言で終わった。
浅羽の変化はよく見ていないと誰も気づきはしないだろう。
伊里野の名前が出たときを除いて。
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930 ：園原電波新聞部号外[]：2012/08/31(金) 23:57:31.86 ID:hOlp6wa00 - クラスのみんなとボーリングに行くこともあればカラオケに行くこともある
しかし晶穂は浅羽が心から楽しんでいないことに気づくのだ。
部室にも用事がなければ来ず、学校が終わればどこかに一人で消えていった。
晶穂は伊里野のことを未だに聞くことができなかった。
浅羽が知っているはずのことを聞くのが怖かったのだ。
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