- ◆ 東方淫々夢 88章 ◆
283 :ウホッ!いい名無し…[sage]:2020/07/12(日) 00:02:13.26 ID:S7MkP/dL - 「いたぞ、イクシオンだ!」
その祈りは、ガシャガシャという武装した数人の騒々しい足音に妨げられた。 イクシオンと呼ばれた漆黒の獣は、弾かれたように振り返ると、大きく嘶いた。 バチバチバチ…… にわかに、一角の周囲に無数の飛電が舞い踊る。 誰かが叫んだ。 「やばい、紫電の槍(ライトニングスピア)だ!」 眩い数条の雷光がほとばしり、慌てて目を腕で覆う傭兵たちの姿を一瞬浮かび上がらせた。 老騎士からすれば、まだ年端もいかぬ、あどけない顔の少年たちだった。 「しまった。逃げられた!」 「すぐに追うぞ!」 稲妻のように駆け出した漆黒の獣を、少年たちが追いはじめた。 と、殿を駆けはじめようとしていた白いローブ姿の少女が、ふと老騎士の方を振り返った。 「ねえ、みんな待って! この人、生きてる!」 薄れゆく意識の中で、老騎士は呟いた。 「イクシ……オ……ン」
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