- 【石川賢】ゲッター線が他作品に出張!! 第31章【クロスSS】 [無断転載禁止]©2ch.net
196 :名無しさん@お腹いっぱい。[sage]:2016/04/09(土) 22:26:45.82 ID:Sfy+7frZ - ゲッターロボ號を読み返してみると、號の頑丈さに驚く
延々と攻撃を庇い続けてたのによくあれだけ動けるもんだな あと何気に、號の状態で長距離を飛行可能とか性能高いな また間が出たけど、拾いものをした家無し達の話を投下します
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197 :流れ者達の平凡な日常[sage]:2016/04/09(土) 22:29:53.04 ID:Sfy+7frZ - 「なぁクソガキさんよぉ。そのお荷物をどうすんだ?」
ポニーテールを揺らしつつ歩き、チョコレート菓子を食みつつ杏子は傍らの少年に問うた。 「最初に担いで連れ出したのはてめぇだ、魔法少女」 猛禽の眼で杏子をギロリと睨みつつ、ナガレは歩く。 その背中には、幼い身体が一つ。 暗緑色の髪の毛をした幼子が、小さな寝息を立てていた。 起こさないようにするためか、両者は声を発していない。 互いの睨みと眼光で、何を言っているのか大体分かるようになっていた。 無論、以心伝心という訳ではない。 会話の大半が幼い悪口と戦闘関連であるために、予測の幅が狭いのであった。 歩きつつ、更に真紅と黒耀の視線が交差。 数十の悪意の応酬の果てに責任の擦り付けあいが不毛であることに両者は気付いた。 ナガレは後ろに回していた左手を戻し、人差し指で胸板を小突き、杏子を見る。 杏子も視線で応答。 了解の意を伝えた。 「警察に連れてく。今の内に交番の前にでも置いとけばいい」 それを声には出さず、彼は心で呟いた。 「薄情だな」 それを読み取り、杏子も思念で返した。 その音無き声色には、苦さと棘が。 「その役は俺がやってやるよ。てめぇは先に帰るか時間でも潰してな」 「言われるまでもねぇ。 つうか、せめて聞くぐらいはしろよ。シャコウジレイってのがあるだろ?」 「どうせ断るつもりだろうが。 それに、てめぇが警察にとっ捕まったらそれこそめんどくせぇ」 ナガレの言葉に、杏子の返答がしばし途切れた。 警察の厄介になるというところで、思い当たる点があった。
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198 :流れ者達の平凡な日常[sage]:2016/04/09(土) 22:34:24.00 ID:Sfy+7frZ - 「余計なお世話だ。今度はもっと上手くやるさ」
「あ?そっちじゃねえよ」 あっさりと否定するナガレであった。 それなりの思いがあって返答した杏子は、肩透かしを喰らった気分だった。 「魔法少女ってのがバレたらどうすんだ?下手すりゃ研究所送りだぞ?」 「は?研究所?」 聞き慣れないにも程がある単語を投げられ、杏子は言葉に詰まる。 それを気にせず、彼は続けた。 「魔法少女ってのは珍しいんだろ。新聞にもアニメの番組欄にしか、魔法少女は載ってねぇ」 「そりゃそうだろ。あたしらのことは一般には知られてねえからな」 「上手く溶け込めてんな。中々出来るのことじゃねえぞ」 「お褒め頂き光栄だね。そんで、その研究所とやらに送られるとどうなる?」 多分の不信感と、僅かな恐怖が杏子の好奇心を煽っていた。 「ああ。研究所ってのはヤベぇぞ。解剖に改造、拘束と監禁、拉致や麻酔と分解。 それに何の役に立つか分からん研究や危険な妄想、液体や氷漬け大好き人間どもの巣窟だ」 どういうリアクションをしていいのか杏子には分からなかったが、 捕獲され、為すがままにされれば地獄が待つことだけは分かった。 捕まる気もしなければ拘束されるつもりも無かったが、これは確かに面倒そうだった。 「まるで見てきたみてぇじゃねえか。テメェの故郷かなにかか?」 とりあえずということで、問う。 「まぁ10分の1くらいは外れちゃいねえよ。つうかこれは前に話したはずなんだが」 言われてみれば、そんな気もしていた。 思い出そうとすると、例の如く頭痛が走った。 「あー、もーいい。テメェの話なんざ、一々覚えていられるか」 「覚えの悪さまで、俺のせいにするんじゃねえ」 話は数度に及んでいるらしく、ナガレからしたらこれは当然の反応だっただろう。
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199 :流れ者達の平凡な日常[sage]:2016/04/09(土) 22:38:24.36 ID:Sfy+7frZ - 「聞きたくもねぇ与太話なんざ、そんなもんだよ」
「てめぇがしろって言った時にしか話してねぇはずなんだが」 「じゃあそれがおかしいのさ。テメェの記憶違いさ」 「そういや知ってるか。頭を良くするには刺激を与えるのがいいんだとよ」 「それならあたしも知ってる。効率的な刺激の与え方もな」 剣呑な雰囲気が、両者の間で編み込まれていく。 その繊維は、殺意と戦意で出来ている。 「それじゃ話がはええな。帰ったら実行しようぜ」 「負けた方が金と飯の調達な」 この時点で、両者の頭脳は一応の相棒を撃滅する手段の捻出に演算能力が傾けられていた。 そのため、継続されていたある事柄が蔑ろになっていた。 それらのやり取りは、声によって行われていたのである。 数歩歩き、びたりと止まる。 それに気が付いたのである。 杏子はゆっくりと視線をそちらへ流し、ナガレは首を左に向かせた。 ボサついた暗緑色の前髪の奥に、澄んだ青色の瞳を宿した双眸があった。 それらは、少年と少女の姿を映していた。 「おはようございます」 眠そうな声で、幼子は言った。 反応に困り、二人は一時、肉の柱と化していた。 「…おはよう」 距離が近いせいか、ナガレの方が先に回復していた。 だがその声は、やや上擦っていた。 「…おなかへったよ」 杏子は口に咥えた棒状のチョコレート菓子を唇で玩び、上下に揺らした。 数百メートル程先のビルの2階に、ファミリーレストランの看板が見えた。 時刻は13時30分。 中途半端な時間且つ平日ということもあり、窓から覗く人影は疎らだった。 其処へ向けて歩き出す杏子は、首を傾げて振り返る。 この時もまた、言葉は必要なかった。 金はテメェが出せと、真紅の瞳は告げていた。 仕方がないとばかりに軽い吐息を漏らし、彼はその後に続いていった。
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200 :流れ者達の平凡な日常[sage]:2016/04/09(土) 22:43:25.09 ID:Sfy+7frZ - 入店し、店員の案内に従い席へと座る。
並び方をそれぞれの髪の色で表せば、 緑机赤 黒机 の配置となっている。 半ばほど夢の世界に入っている幼子の胃が、悲鳴の様な音を挙げた。 ナガレが幼子に注文を聞こうとした時に、杏子が手を挙げた。 それに気付いた若い女性店員が足早に近付き、丁寧な口調で注文を伺う。 「ドリンクバー3つ。あと、ここからここまでな。早くしろよ」 杏子のここからとはメニューの先端で、ここまではその終わりだった。 彼女が開いたページには、ステーキの写真が散らばっていた。 店員の顔が一瞬強張るが、直ぐに笑顔へと戻り、店員は注文を繰り返した後に席から離れていった。 店員が厨房へと引っ込んでから、 「気が利くな」 とナガレは告げた。 ふん、と鼻を鳴らして杏子は返した。 少女と少年の傍らで、彼らより更に幼い子供が 震えていた。 「大丈夫だ。怖い奴はもういねえよ」 今度はナガレが声を掛けた。 幼子の震えは止まり、彼女はゆっくりと視線を上げていく。 最初に向かいに座る杏子をちらりと見てから、彼の方へと向いた。 「あなたは、おにいちゃん?」 しばしの硬直。 した後に右手をゆっくりと挙げて顔に這わせ、輪郭を確かめる。 そして、彼の予想は確信へと至った。 「…ああ、俺は男だよ」 男らしい部分もあるが、歳相応の幼さが垣間見えるために中性的な要素もある。 全体的にみて美形であることがそれに拍車を掛けていた。
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201 :流れ者達の平凡な日常[sage]:2016/04/09(土) 22:48:28.50 ID:Sfy+7frZ - 「おにいちゃんもお腹空いてるの?」
「…そうだな。腹は減ってる」 声のトーンがおかしかった。 地を這いながら、絞り出したような声だった。 「じゃあ、たくさんたべなきゃだめだよ。その背ものびないよ?」 途端、見えない刃が彼の肉体を貫いたように思えた。 脳内イメージにて、ナガレの姿は全身を無数の刃に貫かれていた。 額に突き刺さったそれは、自分の得物に置き換えておいた。 少しだけ、面白いと感じた。 「ゆまもね、はやくおおきくなりたいんだよ。 それにはまず、たくさんたべなきゃねっ!」 今まで黙っていた事の反動か、幼子は思いの外、饒舌だった。 「そうだな、食べ物は全てだな。そうか、そういうことだよな」 理屈は分かるが、何かがおかしい。 無駄に壮大な言い方だった。 「がんばろうねっ!」 「…うん」 ああ、ではなく「うん」。 混乱の極地に近い場所に、ナガレは立っているのだろうと杏子は解釈した。 何処か憐れなものを感じたせいか、杏子は笑う気にはなれなかった。 それほど、その姿には悲痛なものがあった。 また、杏子の鼓膜と感覚は、骨が軋む音を捉えていた。 発生源は、額に添えられたナガレの左手からである。 少し前に、使い魔の頭を握り潰すのを見たことがあった。 魔法少女なら珍しくは無いが、彼は人間の筈だ。 どう少なく見積もっても3桁に達する握力で自身の顔を圧搾している。 幼子の言葉が、相当に応えたようだった。 だがとりあえずは、先ほどの研究所の話もあるので、 彼が人間であるという考えはいい加減に改めるかと、杏子はナガレの苦悩を他所にそう思っていた。 「おねぇちゃん」 それまでの話し相手が機能不全に陥った為か、幼子の話し相手が杏子に移る。 ジロリとナガレを睨んだが、そちらは頭蓋を(或いは顔の造形を)苛む事に忙しいようだった。
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202 :流れ者達の平凡な日常[sage]:2016/04/09(土) 22:52:23.18 ID:Sfy+7frZ - 「どうした?」
仕方なく、という風に気怠げに、言葉に応じた。 「ええと…あ、えっと…」 何を用いて表現すべきか、迷っているようだった。 幼子の瞳に宿る恐怖の色から、杏子はそれを察した。 「怖い奴か?」 問いかけに、幼子は頷いた。 「あれはな、魔女って言うんだ。お前の」 そこで少し、言葉を詰まらせた。 脳内では、「お前の両親を殺した奴だ」と紡いでいた。 「…お前の事を襲った奴だ」 言葉を反らし、言い終える。 それだけで、疲労感を覚えていた。 遭遇した生存者自体が少ないために、こういう事に慣れていなかった。 「マジョから…たすけてくれて」 ありがとう、と続け、幼子は頭を下げた。 深々と、見ているこちらの首が痛く思えるほどに。 その姿に、杏子は苛立ちと憤りが合わさったような感情を覚えた。 「勘違いするなよ、ガキ。 あたしらはテメェが居たことなんて知らなかったんだ」 感情のままに、言葉を紡ぐ。 「そっちがたまたま居合わせただけさ。感謝される云われもねぇよ」 突き放すような口調になっているのは分かったが、それでも続けた。 そして、「だから明日からは全部自分で何とかしな」と。 そう続けるつもりだった。 「ゆま」 言いかけたところで、不意に声を挟まれた。 しっかりとした、意志の篭った口調であった。 「がきじゃないよ。わたしの名前は、ゆま」 思わず、杏子は呆気に取られていた。 強固な何かを、その口調から感じ取ったのである。 ナガレもまた、頭から手を外してそちらを見ていた。 彼の口元には、笑みが浮かんでいた。 そこに、獲物に向ける凶悪さは、微塵も感じられなかった。 「よろしくな、ゆま」 ナガレの言葉に、暗緑色の髪の幼子、ゆまは青い瞳を輝かせた。 名前を呼ばれたのが、とても嬉しいようだった。
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203 :流れ者達の平凡な日常[sage]:2016/04/09(土) 22:57:35.44 ID:Sfy+7frZ - 「俺の名前は」
「こいつはナガレというんだ。人間にギタイしてる狼だ」 言い掛けたところに、杏子が割り込む。 半分は嫌がらせ、もう半分は除け者になっているようで癪だったためだ。 要はやはり、嫌がらせのためだった。 「おおかみ?」 「おい」 先程の穏やかさは何処へ行ったのかと言わんばかりの凶悪な目付きで杏子を睨む。 杏子はそっぽを向いて、 「冗談だよ。猟犬よりゃいいだろ」 と一応の謝罪。 ナガレの気は晴れる訳もなかったが、彼は怒りの表情を直ぐに引っ込めた。 ゆまがそちらに顔を傾けたからだった。 「かみさま?」 オオカミという単語が分からなかったらしく、 幼子の認識は更に曲介した事柄へと進化してしまっていた。 神様という単語に、杏子もナガレも複雑な表情を浮かべた。 杏子には、彼が何故そんな顔になるのかは分からなかったが、 彼も「神」という言葉が嫌いな事は分かった。 一瞬、黒耀の瞳に宿ったのは、紛れも無い憎悪の光だったためだ。 「俺は人間だよ。んで、こいつは」 何と続けるべきか、ナガレは少し迷っていた。 だが、彼が言葉を続ける必要は無かった。 「ひょっとしておねぇちゃん、まほうしょうじょ?」 「何っ!?」 杏子とナガレは思わず、大きな声を出した。 叫び声と言っても良かった。 「テレビでよくみたよ。おねえちゃん、あれみたいにふわふわしてたしぴょんぴょんしてた」 「…そうだよ。あたしは魔法少女だ」 誤魔化せる手段が見当たらず、杏子は肯定せざるを得なかった。 次いで、ゆまはナガレをじっと見た。 その幼い瞳には、期待の色が。 それに対し、ナガレは力無く首を振る。 俺は違うと言っているのだ。 再び骨が軋む音が鳴った。 テーブルの下で固く握られた拳が、肉と骨とを苛んでいた。 「……いつか見つけ出してやる」 手を解きつつ、幼子に聴こえないよう、小さくナガレは呟いた。 それが思念となって、杏子に届いてしまっていた。 真意は不明だったが、幼子以外に向けた言葉のようだった。 また、言葉に込められた感情を解析するのは、やめにしておいた。 頭痛どころじゃ済まなくなると、杏子の本能が危険を告げていた。
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205 :流れ者達の平凡な日常[sage]:2016/04/09(土) 23:03:41.62 ID:Sfy+7frZ - 残念そうな顔をしたゆまに、杏子は軽く手招きをした。
幼子はそれに気付き、そちらへと顔を向けた。 「あたしの名前がまだだぞ」 ぱぁっと、光が差し込んだかのように、ゆまの顔が綻んだ。 表情豊かな奴だと、杏子は思った。 「あたしは杏子。佐倉杏子だ。おねぇちゃん、じゃねえ」 先程の仕返しということか、杏子は悪戯っぽい表情を浮かべていた。 ゆまはそれに気付いたどうかは定かではないが、 「よろしくねっ!キョーコ!」 と、これまた輝くような笑顔で返した。 自分の顔もまた、僅かに緩んだのを杏子は感じた。 それは笑みを象ったらしく、ゆまもまた微笑んだ。 そして、傍らで半ば硬直しているナガレの体を揺らし始めた。 「ねーねぇ、ナガレは魔法つかえないの? 本当に魔法少女じゃないの?じゃあ何なの?おしえておしえてよっ!」 「…あぁ、うん。俺は魔法少女じゃないよ。男だから。 このツラでも声でも男だから…こんなんでも、俺だから…」 「え!なにそれ!どういうこと!?おしえておしえてっ!」 次から次へと、笑顔を浮かべる幼子だった。 だがそれを見ていると、杏子の心に黒い何かがこびり付いた。 ゆまの姿が、記憶の中の幼子と被ってしまっていた。 外見はかなり違うが、歳は同じくらいだったかもしれない。 思い出すだけで、心に罅が入るような気持ちになった。 それを掻き消すように、杏子はチョコレート菓子を口に運んだ。 心の裂け目を埋めるように咀嚼し、飲み込んでいった。 つづく
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206 :名無しさん@お腹いっぱい。[sage]:2016/04/09(土) 23:09:04.03 ID:Sfy+7frZ - ここまでで
グロ描写の多いスピンオフ、おりこ☆マギカの幼女登場 作者の作風のためか、原作では話毎に(下手したらコマごとに)顔の形が変わる顔芸要員でもある
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