- あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part308
63 :名無しさん@お腹いっぱい。[sage]:2012/03/22(木) 11:08:10.28 ID:miKQm1ww - 予約も無いようなので11:10頃から小ネタ「新兵の使い魔」を投下します。
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64 :新兵の使い魔[sage]:2012/03/22(木) 11:10:53.70 ID:miKQm1ww - 「それじゃぁさよならだ。短い間だけど、割と楽しかったよ」
それだけを言うと、ロングビル…いや、今や世間を騒がす怪盗、土くれのフーケは破壊の杖をゆっくりとルイズたちに向けた。杖は手放してしまっているので、魔法は使えない。 最早、打つ手はない。キュルケは観念して目を瞑った。タバサも、ルイズも同じだった。ただ一人、ルイズの使い魔であるアービンだけは瞑らなかった。 「…へぇ、度胸があるね」 「いや、そういうわけじゃない。それよりもロングビルさん…いや、フーケさんかな?…どうしても、かい?」 「残念だけどね、命乞いは聞けないよ。アンタの事はそう嫌いじゃないけどね」 「俺も残念だよ…それじゃ、貴方の負けだ。フーケさん」 その言葉と同時に、アービンは素早く動いた。足元のデルフリンガーに手を伸ばす。 無論、フーケはそれを指を咥えて見ているような馬鹿でもお人好しでもない。 「動くなと言ったろ!」 その言葉と同時に躊躇いなく破壊の杖の引き金を引いた。だが、何事も起きない。 「そ、そんな?何故?」 予想外の出来事に、狼狽の言葉と共に、思わず破壊の杖を覗き込む。それが致命的だった。 視線を戻した時には既に、限界まで引き上げられたスピードでアービンが突進してきていた。 「それは魔法の杖なんかじゃない。俺達の世界のありふれた武器…ただのロケットランチャーさ」 アービンのその言葉の意味が分かる人間は他には誰もいなかったろう。デルフリンガーの柄を腹にめり込まされ意識を失ったフーケはそれを聞く事も適わなかったが。 学院に戻ったルイズ達は、フーケを捕らえ、破壊の杖を取り戻した功績により、オールド・オスマンからシュヴァリエに推薦される事になった。 だが、一番の功労者であるアービンに対しては、貴族でないということもあり、何の報酬も与えられなかった。 その事にルイズは引け目を感じたが、学院長の決定でありどうする事も出来なかった。 夜になり、予定通りフリッグの舞踏会が華やかに開始された。勿論、今夜の主役は一躍英雄となったルイズ達であった。 キュルケは、手馴れた様子で次々にやってくるダンスの申し込みを優雅に捌いていた。タバサは、舞踏会に目もくれず、料理と格闘していた。 そしてルイズは、ダンスを申し込む男達に囲まれていたが、誰とも踊る気は無さそうだった。 まぁ、急に掌返しされても今まで散々からかわれてきたのだから、まともに相手にする気になれないのは当然だろう。 その様子をアービンはバルコニーでワインを片手に一人で黄昏ながら眺めていた。 と、その目が細められた。やっと男達の輪の中から抜け出したルイズが近付いてきたのだ。 ルイズは、ロングビル…いや、フーケを捕らえた時から、そして今もアービンの表情にどこか翳りが差していることが気になっていた。 舞踏会に出ればアービンの気も紛れるのではないか、と思ったのだがどうもそうではないらしい。 一人で佇むその姿はフーケを捕らえた時とは同一人物とは思えないほど儚げで、声を掛けずにはいられなかった。
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65 :新兵の使い魔[sage]:2012/03/22(木) 11:13:29.80 ID:miKQm1ww - 「…舞踏会は退屈かしら、アービン」
「どうしたんだ、ルイズ。主役がこんな所に来てる暇は無いだろう」 「ふふ、相手をしなくちゃならない主賓が居るわけじゃないもの。構わないわよ。 それよりも…その…御免なさい、アービン。私達を助けてくれたのに、貴方にだけ何も無くて」 「別にいいよ。何かが欲しくてやったわけじゃないし、君達が無事で良かった」 「でも、何かずっと落ち込んでいるように見えるわよ。…もしかして、フーケ…ロングビルのことが気掛かりなの?」 「…まぁ、仕方ないと思っているよ、あれだけの事をして、ルイズ達の事も手にかけようとした訳だし…流石に弁護は出来ないのは分かってるんだけど… 処刑される、となるとちょっと…ね。…甘いと思うかい?」 「そうね…甘いわね。…けど、良いんじゃない?こうして全員無事だったんだから、ね。少しくらいは同情しても良いわよ」 そこまで言ってルイズは少し迷ったが、更に踏み込んだ質問をした。 「で、落ち込んでるのはそれが原因なの?」 その問いに、アービンは暫く逡巡していたが、 「ああ、嫌な事を思い出しただけだよ。…いや、違うな。忘れられるわけが無い。結局逃れられないってのを思い知っただけか」 「ごめん、アービン。全く分からないんだけど…」 「…ルイズ、俺はね。ここに来る前は軍にいたんだ。戦争中でね。あのワイズダック…ああ、君たちがゴーレムと呼んだあれだよ。 あれに乗って闘っていたんだ。ある時、命令が来たんだ。近くにゲリラの拠点となっている村がある。だから…」 アービンの口調から、何を命令されたのかをルイズは容易に推察できたが、あえて続きを促した。 「だから?」 「村落を焼き払え。そういう命令だった」 予想通りだった。
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66 :新兵の使い魔[sage]:2012/03/22(木) 11:14:27.19 ID:miKQm1ww - 「勿論俺は嫌だった。だから反抗した。俺は軍人である前に人間だ。そんな命令には従えない、ってね。けど…」
そこで、アービンは言葉を切った。その顔には苦渋の色が濃く表れていた。 ルイズは、黙って続きを待った。 「逆上した軍曹に殴られて気絶した。目が覚めたら…全ては終わった後だったんだよ。分かるかい、ルイズ。俺は英雄でもなんでもない。只の…能無しさ」 理不尽だ。ルイズはそう思った。アービンは間違ってはいないのに何故彼が苦しまなくてはならないのか。 だが、その事をどう言ったら良いか分からなかった。 「あの破壊の杖、あれはその戦争でありふれた武器でね…あれで狙われた事も一度や二度じゃきかない。だから、その事を思い出していた。 ここの暮らしは平和だったから、思い出さないように…考えないように過ごしてこられたんだけど… やっぱり許されるわけがない、そういう事なんだな…」 どう言えばアービンが納得するのか分からなかったが、それでも、ルイズは思った事をそのままに口にした。 「随分酷いところに居たのね、アービンは。…分かったわ。それで苦しんでいたのね? …けど、貴方、何も間違ってないじゃない。手を汚したわけでもないし、見殺しにしたわけでもない。 だったら、私が、許してあげるわよ。他の誰でもない、貴方のご主人様が許すと言っているのよ。 悲しむのは良いわ。後悔するのも仕方ない。 でも自分が許せないというのなら.それはむしろ傲慢だわ。貴方は神でもなんでも無いんだから、全て救う、なんて出来っこないんだもの。だから、許せないとか、許されないなんて思わないで」 「ルイズ…」 「ねぇ、踊りましょう?踊れば、少しは気も紛れるわよ」 「…俺、ダンスなんてやった事ないよ」 「大丈夫よ、あれだけ素早く動けるんだから。私に合わせてれば、格好はつくわ。 それに、多少ぎこちなくても今日の英雄に文句を言えるだけの働きをした人なんてここにはいないわよ」 そう言うと、ルイズは悪戯っぽく笑った。アービンも、それにつられて微笑んだ。そうして、二人は手を取り合ってホール中央へと歩いていった。 ちょうど楽師達がテンポの良い、新しい曲を演奏し始めた。月光がホールに差し込み、踊りに興ずる者達を柔らかく照らす。 「おでれーた。主人のダンスの相手をする使い魔なんて始めて見たぜ」 デルフが愉快そうに笑った。 ルイズの言った通り、ぎこちないながらも踊っている内にアービンは段々楽しくなってきていた。確かに、悪くない。そう思った。 この世界に不満がないわけじゃないけど、あのまま軍にいるより余程いい。それに…ルイズに許すと言ってもらえた時、自分でも驚くぐらいに救われた気がした。 錯覚かもしれない。何も解決してない、といわれれば確かにそうだろう。だが、今はこの安らぎを大切にしたい。 だから、きっとこれで、良かったんだ。ありがとう。感謝の気持ちをこめて、アービンはそっとルイズの名を呼んだ。
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67 :新兵の使い魔[sage]:2012/03/22(木) 11:16:19.95 ID:miKQm1ww - 「ルイズ…」
「ああ?何だって?……おい?…チッ、事切れやがった。いい加減にしてくださいよ軍曹。 幾ら馬鹿相手でもちったぁ加減して殴れって何回も言ってるでしょうが。何人目だと思ってるんですか」 「うるせぇよ。戦場でこんなチキンのお守りなんてやってられるか。だったら早くいなくなったほうが後腐れねぇよ」 「ところで、ルイズって何だ?」 「女の名じゃねぇの?ったく、しまらねぇ最期だぜ。ま、こんなチキンが惚れる女なんざぁ、救いようの無いあばずれなんだろ」 「野郎共、おしゃべりはそこまでだ。目標地点に到着。機体状態を確認後、そのまま状況を開始する」 「イエッサー!」 鋼鉄の巨体の中で、そんな会話が行われた少し後、一つの村が消えた。報告によれば、ゲリラ掃討任務の際、新兵が一人戦死したという。 アービンが見たものは夢か、現か、幻か…その答えを知るものはもう誰もいない。 そんな事とは無関係に、今日も戦争は続く。そして明日も、明後日も…
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68 :新兵の使い魔[sage]:2012/03/22(木) 11:17:28.78 ID:miKQm1ww - というわけで、カプコンの色々ぶっ飛んだ格ゲー「超鋼戦紀キカイオー」からこれまたぶっ飛んだ「ワイズダックBADEDルートのアービン」を召喚(?)でした。
間違いなく格ゲー屈指の鬱エンド。夢オチなのにねぇ。タイトーSTGじゃあるまいしカプコンは何を考えてこんなEDを用意したのか… 嫌なモン思い出させるんじゃねぇ、という人いたらごめんなさい。
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