- 【IF系】もしゼロの使い魔の○○が××だったら28
199 :銃士の人 ◆2DS2gPknuU [sage]:2012/02/02(木) 02:20:55.88 ID:FW4PgICY - 本編をちょこちょこ書いている間に一本小ネタができてしまった…
眠らせておくのもあれなので、投稿して皆様の暇つぶしにでもなれば幸いです
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- 【IF系】もしゼロの使い魔の○○が××だったら28
200 :銃士の人 ◆2DS2gPknuU [sage]:2012/02/02(木) 02:25:47.72 ID:FW4PgICY - 【演劇】
「いやしかし」 珍しくニヤついた表情で、今が飲み時の紅茶にも手を出さずに、カトレアは口を開いた。普段も笑みを絶やさず、使用人たちからも慈悲深い人だと人気のある彼女であったが、今日のお茶会の場ではそんな様子 など皆無であった。むしろ何か俗っぽい様な事を考えているような表情であった。 それを見ていたエレオノールは訝しげな表情で眉を顰めながら、とりあえず自分の作ったスコーンを口に含めて言った。 「なに気持ち悪い顔しているのよ」 「気持ち悪いとはなんですか、気持ち悪いとは」 冷たい言葉に、カトレアは少しむっとした表情を浮かべて、やっとのことで紅茶を口に運んだ。その様子を見ていた茶会の同席者であるアニエスとマチルダは少しばかり唖然として二人を見ていた。なお、この 地点ではまだマチルダという本名は明かされず、ルイズを世話してくれている教師の一人として、王都にあるラ・ヴァリエール家の屋敷へと招待されていた。 とはいえ、公式なものではなく、エレオノールの個人的な友人としてだったが。それでもただの一教師であり、しかも出会って間もないマチルダが受けている待遇は異例のものだったから、二人の仲の良さが伺 える。本人としてはとても複雑な気持ちである事は、後々彼女の正体がわかれば自然と分かるはずである。とはいえ、一応彼女が呼ばれた事情はあるわけだが。 さて、そのマチルダと一人もそもそとマイペースにクッキーをほおばっていたアニエスは、突然の二人のやり取りに驚いて何も言えずにいる。むしろ、先ほどのニヤついていたカトレアを見つけてからその様子 だったが。 「どうしたんだい、突然」 「そうですよ、姉上、姉様」 二人はエレオノールとカトレアに尋ねかける。しかし、上機嫌な表情のまま、カトレアは何も言わなかった。 それには流石にアニエス達も怪しむほかなく、何だろうと首をかしげることしかできなかった。しかし、ふとアニエスが思い出した。 「ああ、そうか」 「あん? あんた、何かわかったの?」 「さっきの劇の事じゃないか?」 「ああ、あれかい」 アニエスの指摘に、カトレアはにこやかに頷いた。どうやらアニエスの予想は当たっていたようだ。 というのも、このお茶会の前に、彼女たちはとある劇場へと足を運び、そこで新作の演劇、いや歌劇を見てきた。華の王立劇場に比べてだいぶ小さく素朴な劇場であるが、小さな演劇団にとって登竜門のような 場所だった。アニエス達が見たのは、女だけの歌劇団による、架空の国での戦争中を題材にした男女の在り来りな悲恋ものである。 しかし、在り来りとはいえ、劇中の死地に向かわざる得ない将軍と王妃との恋愛は激しくも純粋であり、歌劇団の演技力もあって、その先の展開をふくめて涙なしでは見れない隠れた名作と言ってもいい。 実際、これを見ていたエレオノールとカトレアは涙を浮かべながら演劇を見、最後の王妃が自殺するシーンではその堤防が決壊してしまっていた。マチルダも少しだけ神妙な表情をしていた。ただ一人、アニエ スだけがきょとんとしていた。物語が理解できなかったわけではないが、むしろ姉二人の普段見ない姿にびっくりしてしまったのだった。 「まあ確かに面白かったとは思うよ」 「はい! あのような歌劇は初めて見ました。女性なのに、よくぞあのように男性の役をこなせるのは驚きましたわ」 「体格が男に近いのもあるけれど、何よりもあの声よねぇ。あんな綺麗に低音の声を出せるなんて、確かに話題になるのも分かるかもね」 「ルイズも来ればよかったのに」 至極残念そうな表情を浮かべているカトレアだったが、マチルダは苦笑しながら紅茶を口に運んで、 「あの子は自業自得だって」 と言う。そう、本来ならば家族でこの劇を見るはずだったのだが、毎回のごとく実技も筆記も成績の悪いルイズは追試に追われてしまって、今日もまた学院で追試させられているため都合が合わなかった。 さすがに家族に悪いと思ったのだろう。ルイズは自分のための席をマチルダに使ってあげてほしいと懇願した。ルイズに甘い父親は、彼女が来れない事を悔やみながらも、娘の頼みということで快く了承した。 そんなマチルダに、エレオノールはここぞと意地悪な笑みを浮かべながら言った。 「少しは感謝してほしいわねぇ」 「そりゃもちろんさ。……本当は、家族ときたかったけれど」 「何か言った?」 「いいや、何も」 「皆様は」 カトレアは少し興奮で顔を赤らめながら、思い拭けそうなマチルダとそれを心配するエレオノール、そしてやはりマイペースにクッキーをほおばるアニエスに話を切り出した。
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201 :銃士の人 ◆2DS2gPknuU [sage]:2012/02/02(木) 02:28:08.03 ID:FW4PgICY - うわ、ちょっとなんでこんな変な改行になってるんだ…
「どの役がお好みになられましたか?」 「どの役って……。貴女は誰が好きなの?」 「私は……そうですわね。将軍の弟君であられる、ルイ様でしょうか。目立つ方ではありませんし、少し素直ではない性格ではありますが。 厳しさの中にもお優しい感情をお持ちになられてますし、何よりも奥方を大事にしている姿を描いた部分はとても印象的ですわ」 興奮気味に語るカトレアだったが、彼女の言うルイはそんなに人気のある役ではない。むしろコアなファンがいる、という表現の方が似合う役だ。 決して美男子な役ではなく、作中でも嫌われ役ではあるが、それでも兄を支える重要な役を担っている。 カトレアとしては意外であったが、何となくエレオノールは納得できた。 「なるほどねぇ。カトレアはああいう男が好み、っと」 「こ、好みってわけでは……」 「はいはい。で、ロングビルは?」 「ああ、私? 私はそうだねぇ……。なんだっけ、あいつ。忠臣を装いながらも、裏切って敵側に回った……」 「グレゴワール?」 「ああそうそう。そいつそいつ。あんた、よく覚えているね?」 半ば当てずっぽうでエレオノールは言ったのだが、どうやら正解だったようだ。 それにしても、そんな役は先ほどのルイよりも好きになれないように思えるのだが、どうしてだろうか。 そのあたりはカトレアも気になったらしく、意外そうに眼を見開いてマチルダに尋ねかけた。 「えー……意外ですね。どうしてですか?」 「うーん、なんでだろうね。まあ、裏切りにも事情があったし、なによりもその事情が家族の、 母親のための復讐、っていうのがちょっと惹かれてね。あとちょっと駄目男っぽいのが」 「いわゆる介護心がくすぐられるってやつ?」 「そこは母性って言えよ」 エレオノールがしたり顔でマチルダに言うが、彼女は逆にエレオノールに呆れた顔を向けて返答した。確かに介護心というのは酷い言い草である。 その言い草に、カトレアも少々引き気味だが、気を取り直して姉にも尋ねかけた。 「それでは姉上はどなたが好きなんですか?」 「え、えーっとね。私は……えっとその」 「なんだい、早くいいな!」 「そうですわ」 「う、うーん。私はね、やっぱり主人公のベルサリウス将軍が格好いいかなぁって思う、かなぁって」 「ああ、うん」 「うん、理由は言わずもがなですわ」 「うっさいわよ! ふうんだ! どうせ私は優しくて美男子が好きなのよ!」 「バーガンディ伯も優しいお方ですし、渋くて、でも顔立ちも良くあだだだだ!」 「あんたはちょっと口が過ぎるよう、ね!」 「いだいいだい!そんなこめかみをぎゅうううってしないでください!」 「はぁ、まあ馬鹿は置いておいて、あんたはどうなんだい?」 「え、私か? あ、いや……その」 マチルダに急に話を振られ、今まで全く会話に入っていなかったアニエスは困った。 実のところを言うと、劇の内容をさっぱり覚えていないのだ。そもそも劇そのものが興味がないというか、彼女にはそう言う感性がないというか。 ただぼおっと見ていただけだったので、正直話題に入りづらい。しかし、ここでそんなことを言えば顰蹙を買うことは請け合いだ。 現にエレオノールの制裁から解放されたカトレアは期待している目でアニエスを見つめている。そんな瞳から逃れるようにアニエスは紅茶を飲んで思考に入るふりをした。 さて、覚えているのは誰だったか。必死にひねり出そうとするも、劇の内容すらろくに思い出せない。何か、何かないかと思いつめると、ある少女の姿を思い出してきた。
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202 :銃士の人 ◆2DS2gPknuU [sage]:2012/02/02(木) 02:28:59.47 ID:FW4PgICY - 「えっと……」
「ふむふむ」 「えと、リー……ズ……?」 「え、リーズ?」 アニエスの口から出た言葉に後の三人はお互いに顔を合わせながら首をかしげてしまった。どうやら今の名前が意外過ぎて、呆気にとられているようだった。 マチルダはひねり出すように、そのリーズの事を思い出しながら言った。 「リーズって……あの小柄な貴族の娘かい? 確かベルサリウス将軍の妹の一人だっけ?」 「そうそう、確かちょっと素直ではないけれど、兄想いで優しくて、可憐な少女だった、わよね? そして同盟国に嫁入りさせられて……」 「というかさ、貴方さ……」 「は、はい?」 と、エレオノールがじろっと目を細めてアニエスを睨みつける。 アニエスは口元をひくひくと動かしながら苦笑をして、何とか誤魔化すように視線を外しながら答える。 だが、エレオノールはさらに詰め寄ると彼女に問い詰めた。 「私たちが男役を上げて言っているのに、なんであなただけ女役なのよ……」 「え、ええええ!? いや、別に深い意味は……」 「やだ……アニエスそういう趣味だったのね……」 「ちょおおお!? カトレア姉さま!? 私は別にそういう意味で行ったわけではなくてですね!」 「じゃあどういう意味よ」 「え、ええっと……その……」 思わぬ攻撃にアニエスはもうたじろぐしかできなかった。 普段は優しいカトレアさえなぜかドン引きしながら自分の事を見てくるから、もはや味方などいないことは明白だ。 いや、適当に思い出した役を言っただけなのに、なんでこうも責められなくてはならないのか。 もうわけがわからないよ、と心の中でつぶやいているアニエスをしり目に、エレオノール達は話を盛り上げようとする。 「あれじゃない? ルイズの面影でも見てたんじゃないの?」 「ああ、あり得るわね」 「やだ……劇の役にまでルイズを見出すなんて……」 「ああ、あのカトレア姉様!? なんで私をそんな冷たい目で見るんですか!? べべべ別にそんなことは……」 「おおう、あんたの妹もこういう表情できるんだねぇ」 「私に対してはよくやるわよ。突っ込みいれる時とか」 「突っ込みいれられるようなことすんなよ」 「アニエス……ルイズが可愛いのはわかるけれど、あまり入れ込み過ぎてはだめよ? お姉さん、同性愛はどうかと思うの。しかも妹とか……」 「ち、違う違う違う! 何を勘違いされているのですか!」 「アニエス、悩みがあるから聞いてあげますからね?」 「あ、憐れんでください!」 アニエスは顔を真っ赤にしながら、必死にカトレアに言い訳をしているが、カトレアは相変わらず信じられないという顔をしている。 だが、その表情はどことなくアニエスを弄って楽しんでいるかのような、そんな含みを感じられる。 そんなカトレアをじっと見てエレオノールは少しばかり含み笑いを見せた。それに気が付いたマチルダは訝しげに首をかしげる。 「……どうしたんだい?」 「ああ、いやね。あの子もああいう表情出来るのかと思って」 「だってさっきはあんたにもしてくるって言ったじゃないか」 「いやまぁ……。そうなんだけれど」 エレオノールは他にも思い当ることがあるようだが、それ以上何も言う事はなかった。そしてただアニエスとカトレアの様子をじっと見つめる。 口下手で強く出れないアニエスはすでに涙目でもはや困りきっていた。 何時もは気丈な振る舞いをしているくせに、姉妹の中ではもっとも弱い立場だった。 それは血の繋がっていないから遠慮をしているとかそういうことではなく、もはやアニエスの天性の質ではないかと思えてしまうぐらいだ。だがそこが可愛い。 カトレアはエレオノールのような意地悪な表情を浮かべていたが、すぐに我慢できなくなって、何時もの優しい表情になってアニエスの頭を撫で始めた。 そして、ごめんなさい、ちょっと姉様の真似をして意地悪して見たかったの、と苦笑しながらアニエスを慰め始めた。 それを見てエレオノールはぷっと噴き出す。自分の真似って言うのは少し気に食わなかったが、何となくカトレアの珍しい様子が嬉しくなってしまった。 ここにルイズがいればどれだけ目を丸くしていただろうか。エレオノールはそれを想像しながら、アニエスの頭をこついた。
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203 :銃士の人 ◆2DS2gPknuU [sage]:2012/02/02(木) 02:29:45.86 ID:FW4PgICY - 「情けないわよ、アニエス」
「……わかってます!」 エレオノールなりの優しさだったのだが、伝わらなかったようだ。 以上です。最初の投稿文が変な改行になってしまいました、ごめんなさい。 後久しぶりなのにこんな小ネタでごめんなさい。
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