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362 :Gulftown 忍法帖【Lv=7,xxxP】 ◆mhDJPWeSxc [sage]:2011/06/08(水) 20:45:52.62 ID:DNK2GAyv - どーもです
一応今回の投下分を書き上げたのですが 確認したところ約13キロバイトあるようです タイミング的に微妙ですがどうしましょうかのー 今の忍法Lvだとスレ立てたしかできないはず(汗)
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365 :Gulftown ◆mhDJPWeSxc [sage]:2011/06/08(水) 21:37:41.18 ID:DNK2GAyv - どうもです
投下中に475キロバイトを超えてしまうのでどうかと思ってましたが んでは22時ころから行きますー 今回どうしても車関係の専門用語が増えてしまってますが グレアムさんが語ってるということでひとつ(;つ )つ
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366 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc [sage]:2011/06/08(水) 22:01:53.59 ID:DNK2GAyv - ◆ SERIES 4. 幻の最高速ランナー
クライド・ハラオウンがジャパニーズ・スポーツカーに出会ったのは、1970年代のカリフォルニアだった。 当時、日産(ダットサン)が発売した初代フェアレディZ、アメリカ名「240Z」が、 爆発的なヒットを飛ばし、世界中の車が集まる米国市場で急速にその地位を拡大してきていた。 すでに高性能スポーツカーとしてレースシーンを席巻していたポルシェ911ターボに迫る性能を持ち、さらに価格はその半分。 現代にいたるまでの、「安価かつ高性能」という、日本製工業製品のアイデンティティを決定づけた車だった。 その当時から、日米問わず、走り屋たちにとってのZはポルシェのライバル、ポルシェターボ撃墜を最終目標とされたマシンだった。 フェアレディZは、製造コストを引き下げるため、エンジンや足回りなどの主要コンポーネントを他の車種から流用した。 搭載されるL型エンジンは、もともとは高級セダン用のもので、パワー志向の性格ではなかった。 だが、高級車ゆえの静粛性重視の設計のため、エンジンブロックは相当分厚くつくられていた。 部品としてのエンジンブロックは鉄の塊であるため、厚みを増すことは重量増に直結し、 運動性能を重視するスポーツカーではマイナス要因になりうる。 だが、重量が大きいということはそれだけエンジンブロックが頑丈ということだ。 つまり、チューニングによってパワーを上げても、エンジンが出力に耐えるということである。 エンジンパワーは、「出せる」ものではない。 出したパワーにエンジン自身が「耐えられる」ことが肝要なのだ。 エンジンが壊れるというのは、エンジンが自らの発揮するパワーに耐えられなかったことを意味する。 その点で、日産L型エンジンは比類なきパワーを秘めていた。 それは、時代が下り、Zがモデルチェンジし、エンジンがVG型に切り替わっていっても、なお不変の魂だった。 クライドが当時暮らしていた、アメリカ合衆国はユタ州、ソルトレイクシティ。 初代S30Zのデビューから数えること22年、S30型から3代数えたZ32型フェアレディZが、 世界中のスポーツカーの頂点に立つことをめざし、アメリカに乗り込んできた。 戦う舞台は、ユタ州グレートソルト湖・ボンネビルスピードウェイ。 塩湖が干上がった広大な平原に設置された最高速ステージに、その日本製スポーツカーは現れた。 JUNオートメカニックの手によってチューンされたZ32フェアレディZは、エンジン出力1000馬力オーバー、 速度にして実に424.74km/hという前人未到の記録を打ち立てた。 若き日のクライドに、その印象は強く焼き付いたものだった。
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367 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc [sage]:2011/06/08(水) 22:06:46.01 ID:DNK2GAyv - チューニングカーの世界。
単にストック状態でスピードを出すだけならば、アメリカのシェルビー・SSC、ドイツの ブガッティ・ヴェイロン、イギリスのマクラーレン・F1などがある。 だが、これらの超高価格車たちをもってしても、Zの記録を打ち破ることはできなかった。 伝説の最高速マシン。 そんな、街場の走り屋たちの心をとらえたのがZ、そして日本製チューンドだった。 クライドもまた、そのひとりだった。 ハラオウン家は優秀な軍人を多数輩出しているアメリカ海軍の名門である。 横須賀基地に駐留する第7艦隊所属として日本への赴任が決まった時、クライドは内心小躍りしたものだった。 現代でこそ、アメリカでもスポコンブームをはじめとした日本製チューンドカーが広まっているが、 クライドが現役の頃はまだまだ少数派だった。カミナリなどのアメリカ独自ブランドもあるにはあったが、 車両はディーラーで購入できても日本の最新チューニングパーツを入手するには煩雑な輸入手続きもあり、 なかなかおいそれと手の出せるものではなかった。 本場のチューニングカーに触れたい。 その思いを胸に秘め、クライドは日本に、そして首都高にやってきた。 速ければ、それが日本人だろうとアメリカ人だろうと受け入れる下地はあった。 多忙を極める軍務の合間を縫って、走りに出たりショップを訪ねたり、クライドはすぐに首都高の走り屋たちに馴染んだ。 そして、クライドと同じように日本での走りを嗜んでいたもう一人の軍人に、出会うのはある意味必然ともいえた。 「提督も走りをされてらしたんですか……?」 「ふふ、お付きの運転手を雇って、メルセデスの後席に座っているだけだと思っていたかね?」 クロノは恐る恐る尋ねた。 グレアムほどの人間ともなれば、立場上、危ういことが表に出るのは絶対に避けなければならない。 それでも、とりつかれてしまう魅力がある。 スピードの魔力とはそれほど強いものなのだ、と、グレアムは静かに語る。
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368 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc [sage]:2011/06/08(水) 22:12:59.23 ID:DNK2GAyv - グレアムもクライドも、軍務という仕事の性質上走る日自体がそれほど多くないため、
湾岸でも見かける者はまれだった。 2台でつるんで走る、おそろいの銀色に全塗装されたダブルエックス2.8とコルベットZR-1は、 当時の最高速ランナーたちにとってはひとつの伝説だった。 幻の最高速ランナー。 そうあだ名されたクライドは、80年代末の時点でも既に旧型モデルとなっていたダブルエックスを、 当時最新の1JZ-GTEエンジンに載せ換えて500馬力以上にチューンし、 大台(300km/h)を出す走り屋として知られていた。 彼ならば、あの悪魔のZやブラックバードにも勝てるだろう。 そういわれていた。 だが、その勝負はついに実現することはなかった。 クロノは黙ってグレアムの話に聞き入っていた。 アリアもロッテも固唾をのんで二人を見守り、二人のティーカップはいつしかすっかりぬるくなっていた。 確かに、つまらないこだわり、思い出に浸っているだけ、そう思われても致し方のないことかもしれない。 だが、グレアムはクロノが日本に来ると知った時、どうしても放っておけないと思った。 クロノが本当はどちらへ進もうとしているのか。 ただ単に過去を振り返り、父の面影だけを探そうとしているのか、それとも、父の想いの真実を知り、 その上で自分を前に進めようとしているのか。 車は楽しいだけのものではない。 それを実現するための生活基盤を含めて、人生の過ごし方の大きなウェイトを占めるものだ。 給料のいい仕事をして、その稼ぎを全部車につぎ込むのもいいだろう。だが本当にそれでいいのか。 仕事をしている時間は、ただ金を稼ぐためだけに、無為に費やされる時間なのか。 車だけを、いや、車だけにのめりこむからこそ、それ以外の生活をおろそかにしてはいけない。 グレアムはまず、クロノにそれを教えるつもりだった。
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369 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc [sage]:2011/06/08(水) 22:19:52.24 ID:DNK2GAyv - クロノは思い切って口に出した。
「提督、実はオレ、一度ブラックバードに会っているんです」 グレアムはかすかに目を上げた。 老巧な表情の陰に見え隠れする闘志はまだ衰えていないのだ。 「ロッテと一緒に乗っていた時です。あの911ターボは本当に速い車でした── ──まだまだ、速くなっていく気がします」 「ブラックバード、という二つ名は、実は私とクライドが言い始めたものなのだよ」 「そうなんですか?」 「SR-71という超音速偵察機は知っているだろう。我が空軍が開発した、世界最速のジェット戦闘機── ──その愛称になぞらえて、あの黒いポルシェターボを“ブラックバード”と呼んだのだ。 ドイツ本国でのRUFイエローバード(ポルシェ911ターボをベースにしたチューンドカー)にもちなんでいる。 この愛称は向こうも気に入ったようでね、それ以降、自分でもブラックバードと名乗るようになったのだ」 ブラックバード。それはグレアムにとっても、またクライドにとっても、 日本で走り始めてからの永遠のライバルのような存在だった。 日本のストリートレースにおいてどこか敬遠されがちな欧州車を乗りながら、 有無を言わさぬ速さを備えた実力派の走り屋。 金持ちのお嬢だの、所詮車がいいだけだの、陰口は少なくなかったが、その速さは誰もが認めていた。 1989年、R32型GT-Rのデビューを皮切りに、トヨタ・A80型スープラ、マツダ・FD型RX-7、ホンダ・NSXなど、 日本の自動車メーカーは続々とハイパフォーマンス志向の車種を投入していった。 R32GT-Rの登場によって、ようやく日本車はポルシェと対等に戦えるようになったのだ。 堰を切ったようにチューニングもエスカレートしていく中で、安かろう悪かろうと言われた旧時代の日本車を 300km/hオーバーの速度域へもってゆくクライドの走りは、ある意味皮肉なものでもあった。
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370 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc [sage]:2011/06/08(水) 22:25:35.01 ID:DNK2GAyv - 「GT-Rより前の車は古い……父さんの乗っていた車もそうなんですか?」
「うむ。スープラでいえばA70系以前か。クライドのスープラはA60系だ。これらの世代の車たちは、 一般向けの大衆グレードがあってその上にスポーツグレードが置かれる……つまり、もともとただの 乗用車だったものをチューンして上位車種のように仕立てていたんだ」 「つまり基本設計として古い──と」 「GT-Rが日本のツーリングカーレースを軒並み制覇したのは知っているだろう。 レーシングカー、たとえばラリー車などでもそうなのだが、まずレースに参戦するための車があり、 そしてそれは市販車両をベースにしているというレギュレーションがあるために、 外観や構造を似せた車を作って市販する── そういう作り方を、その頃まで日本のメーカーはやったことがなかったんだ。 レースに出るにも、市販車両をチューンしたものを使っていた」 「われわれアメリカやヨーロッパの車は違うんですか」 「少なくともモータースポーツというジャンルとしては日本より古くからあったわけだからね── たとえば、バックヤードビルダーという業種がきちんと成り立っているということもある。 市販のスポーツ系車種を、きちんとレーシングカーに仕立て上げる、それがビジネスとして成り立っている。 またそういうコトが社会的にも認められている。日本のカスタムカー事情はこれとは全く環境が違う──」 だが、それゆえにクライドも引き込まれた部分があった。 アメリカは広大な大地を自分一人だけで、自分の車で移動する必要があるという背景から、 オーナーが自身の車を自ら整備するという習慣が強い。 日本のチューニング業界──違法改造車、などという呼ばれ方をされていた頃から、 性格としてはそういったアメリカン車に近いものがあった。 車検にも通らない、街を走れば後ろ指をさされる違法改造など誰にも頼めない。 だから、自分で改造技術を身につけるしかない。 そうやって自分で車を整備する技術を身につけた者が、 金をもらって他の同じような境遇の者のチューンを請け負う。 そんな個人ガレージから大きなショップになった例が日本にもいくつもあった。 もっとも、日本の自動車メーカーたちが目指していたのはあくまでもヨーロッパ的な、 悪く言えば昔ながらの舶来賛美的な、“礼儀のいい”ものだった。 だからこそ、それに反発したチューニング業界はアンダーグラウンドに潜っていったのかもしれない。
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371 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc [sage]:2011/06/08(水) 22:35:41.88 ID:DNK2GAyv - 丸裸にされたパイプフレームシャーシに、巨大な水平対向12気筒エンジンが鎮座している。
左右の各バンクにそれぞれ独立したインジェクションシステムを取り付け、構造としては 2.7リッターの直列6気筒エンジンを横倒しに2基積んでいるようなものだ。 それによって駆動されるリヤ2輪はさらにインチアップし、タイヤサイズは実に355/30ZR18となる。 「ECU(エンジン制御コンピュータ)のプログラムも自分で書くんですね」 背後からかけられた声に振り向かず、スカリエッティは笑いながら答えた。 「まあー、このマレリは本国でさんざんイジったからね。それであれかね、君が最初に持ち込んできた NOSはそのまま付けるとゆうことでいいのかね」 「お願いします」 「くくく、ドライブシャフトがちぎれ飛んでも知らないぞ。この排気量にNOSを打ち込む── NOSにより増量される酸素量は約50パーセント増し、単純計算でも8リッター級のエンジンに相当する。 パワーは1000馬力を軽く超えてしまう、2輪駆動のMRレイアウトで制御できる自信は正直ないよ」 「制御します、私が」 「いーねぇ、やはり私の車を乗る人間はそれくらいの意気込みでなければ」 テスタの隣に置かれている黒いポルシェターボを、フェイトはちらりと横目に見た。 知識としてならともかく、ポルシェ自体にはさほど興味をひかれなかったが、 それでも、現代となってはもはや型遅れである2輪駆動の964を、 桁外れのスピードで走らせていたあのドライバーには、意識を向けざるを得なかった。 悪魔のZに挑むということは、そのとき必ず、近くにこのブラックバードもいる。 穢れを知らないような純白を纏ったZとは対照的に、すべてを飲み込んでいくような闇の色をしたポルシェ。 この車にもまた、魔力がある。
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372 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc [sage]:2011/06/08(水) 22:43:05.47 ID:DNK2GAyv - エンジンクレーンのチェーン音が、スクライア商会のガレージに響く。
L28改ツインターボエンジンは、1か月以上かけてようやく、Zのボディに再び収められた。 すべての補機類を新たに接続し直し、燃料、冷却水、オイル、電力などがすべて 問題なく供給されていることを確認したうえで、はじめてエンジンをかける。 バッテリーも設置位置を変更して軽量タイプに交換した。 メーターパネルには新たに電圧計と電流計を取り付け、エンジンの点火状態を監視できるようにしている。 L28のような古いキャブレター式エンジンでは、点火制御の正確さだけではなく力強さもより要求される。 とにかく強い火花を飛ばせなければガソリンを燃やせない。 アナログな機械制御であっても、拾えるデータはすべて拾いたい。 それはなのはとユーノの考えでもあった。 通常、エンジンキーのポジションはOFF-ACC-ON-STARTの4つがある。 OFFは完全に動力が切られている。ACCはアクセサリーの略、室内灯やオーディオなどに電力が供給される。 ONは通常走行の状態、すべての機器が作動する。STARTではそれに加えてセルモーターが回る。 ゆっくりとキーを差し込み、いつもそうしていたようにONのポジションで数秒間待つ。燃料ポンプが作動してから キャブレターにガソリンが溜められるまで、高度な電子制御がある現代の普通乗用車ならまったく必要のない操作だ。 だけど、それはひとつひとつ、この車と向き合う儀式をこなしていくようなものだ。 「風は空に、星は天に、輝く光はこの腕に──不屈の心はこの胸に!」 キーを始動位置へ回す。全電力が一気にエンジンに流れ込み、セルモーターが回り、燃料が噴射され始める。 風──、空気の流れがターボチャージャーを経てインマニからエンジンへ、 星──、6個のシリンダーに埋め込まれた12個の点火プラグがきらめく星のような火花を散らし、 光──、メーターパネルに闇夜に浮かぶ光が灯る。 絶対に挫けることのない、この鼓動。L28改、ツインターボ。 「レイジングハート、セットアップ。油圧、油温、水温、OK──アイドル、OK。──OK、Z!」 Zのコクピットで声に出しながら、なのはは再び、この車が自分の手足のようになじんでいくのを感じ取っていた。 長かった。元に戻るまでの1か月、本当に長かった。 けしてあきらめることなく、前を目指し続けた。そして、Zはそれにこたえてくれた。 機械は嘘をつかない。機械に見放されるのは、いつだってそれを操作する人間──乗り手の問題だ。 再び、このZで走り出す。なのはは走り出す。純粋な白の魔力を纏って、悪魔のZが再び走り出す。
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373 :Gulftown ◆mhDJPWeSxc [sage]:2011/06/08(水) 22:48:27.61 ID:DNK2GAyv - 今日はここまでです
クライドさんが現役のころはちょうど90年代初頭 280馬力規制ができていろんなスポーツカーがデビューしたてで活躍していたあたりですねー そういえば劇場版湾岸ミッドナイトTHE MOVIEの主人公 朝倉アキオ役の中村優一は仮面ライダーゼロノス役 島達也役の加藤和樹は仮面ライダードレイク役と 二人ともライダーつながりなんですねー なんともw ではー
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