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名無しさん@お腹いっぱい。
リリカルな黒い太陽
リリカルな黒い太陽 二十三話
リリカルなのはクロスSSその111

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リリカルなのはクロスSSその111
236 :名無しさん@お腹いっぱい。[sage]:2010/10/04(月) 21:35:18 ID:Wp/42Gsb
お久しぶりです
何度か書き直したけど書き直すと余計変になったきがする。不思議だ…
他に投下される方がなければ21:45〜投下させて頂きます



リリカルなのはクロスSSその111
237 :リリカルな黒い太陽[sage]:2010/10/04(月) 21:46:48 ID:Wp/42Gsb
すいませんスレが新しくなっていたのに名前を入れ忘れてました;
時間になりましたのでリリカルな黒い太陽二十三話を投下します

リリカルなのはクロスSSその111
238 :リリカルな黒い太陽 二十三話[sage]:2010/10/04(月) 21:47:44 ID:Wp/42Gsb
「私の最近の研究は人造魔導師計画、戦闘機人計画だが…そもそもどうして私がこちらの研究に移ったか考えた事はあるかね」

スカリエッティはそうフェイトに尋ねた。
フェイトが答えないでいると、ククッと笑い声をあげてスカリエッティは言った。

「プレシア・テスタロッサが私の代わりにある程度のレベルまで進めることが出来るだろうと見込める人材だったからだ」

そう言ってスカリエッティはフェイトを生み出した魔導師のことを思い返した。

執念深く、丁寧に作業をこなす姿や希望していた死者蘇生の計画ではなく、
使い魔を超える人造生命の作成に携わることを命じた時の爆弾の隣で火遊びをするかのようなスリルが真っ先に思い出された。

「彼女は、実に優秀な研究者だったよ。予定していた段階まではいかなかったが、彼女のお陰で3日分くらいに短縮できたかな?」
「その為に、事故を仕込んだとでもいうつもり?」
「まぁその程度ではあったが…?」

口を挟んだフェイトに、スカリエッティは首を横に振った。

「いやいや違う。『彼女が体を壊すのも知ってて放置したし、君が生まれるのは分かっていたが止めなかった。ジュエルシードのことを教えてあげたりもした』と言うのさ」
「え……?」

思考を停止させたフェイトの表情が、赤い光りに照らされて実によく見えた。

「私は、失敗して君が生まれてくることや、どうやればアリシア・テスタロッサを生み出せるか知っていたよ。彼女は君が生まれるまで気付こうとしなかったがね」
「嘘…」
「お望みなら彼女の体からもう一度アリシア・テスタロッサを産み落とすやり方もあったし
死者蘇生のプロジェクトに参加させることも出来たんだが…既に結構限界だったからかなぁ? 君はどう思う?」

それにしたってあそこまでショックを受けたのは予想外だったよと肩を竦めるスカリエッティ。
対峙するフェイトの顔は赤い光りに照らされていて青ざめているのが見て取れる程だった。

「う、嘘をつくな!!」

それ以上聞きたくないと、否定の言葉を叫んだフェイトにスカリエッティは嬉しそうな顔を擦る。
古傷を少しずつ抉っていくように、実に楽しげに口を開く。

「そう、そんな感じだ。聞く耳を持たなくてね。君達親子はよく似ているよ。だがわかってるだろう? ゼストの身元を確認し、ヴィヴィオと暮らしてきたはずだ」

どこまで話したかなとスカリエッティは動力になっている巨大なクリスタルを見上げた。

「キャリアは終わり、娘のアリシアは死亡と…苦しんでいた彼女の鼻先に、管理局がぶら下げたニンジンもああいう感じだったかな」
「……そんな。だ、だって…」
「優先度の高い使い魔を超える人造生命の作成に推薦した時の彼女の顔は酷いものだったよ」

煌々と輝くクリスタルの光に染まったフェイトの表情を確かめながら、スカリエッティは光を背にして表情を隠した。
フェイトに見られるアリシアの面影を通して、プレシアの顔をより鮮明に思い出しているに違いなかった。
娘を生き返らせられるかもしれない研究に関わるために非合法な誘いに乗り、別の研究をするよう指示された時の表情を。

「死者蘇生の研究に関わりたいという彼女に、私は成果を挙げればあるいはと気休めを言った。すると彼女は! 体を壊す勢いで研究し始めたんだ」

笑顔で語るスカリエッティに、語る内容を否定することも受け止めることも出来なかったフェイトの頭は真っ白になっていた。

「子供じゃあないんだ。私も戦闘機人計画の構想を練るのが楽しかったし、何より潰れる前に最低限の成果はあがりそうだったんで放置したよ」

感情が押え切れず、フェイトはソニックムーブを使用したが……地上からゆりかごまで一瞬で移動してのけた見事な魔法は、同じ人間が使ったとは思えない酷い形で発動した。
それでもスカリエッティが反応することは出来ない位の速さは実現し、高速で移動するフェイトは赤い光の壁にぶつかって鈍い音を立てた。

衝撃で無様に転がったフェイトは、また壁に後頭部をぶつけて動きを止めた。
フェイトが話を聞く間に張り巡らされた結界が、彼女を捕らえていた。

リリカルなのはクロスSSその111
239 :リリカルな黒い太陽 二十三話[sage]:2010/10/04(月) 21:48:56 ID:Wp/42Gsb
スカリエッティの手には趣味の悪いグローブが嵌められていた。
そこから伸びた赤い光の糸が、フェイトを取り囲み檻を創りだす魔法陣の役割を果たしていた。
だからこそ余裕を保っているのか、スカリエッティの言葉は止まらない。

「その後、相談にも来ずに君を作りだしたのも予想外だったかなぁ…あんな簡単なことがわからないんだ。限界に近かったんだろうね」

鼻の骨を折ったのか血を垂らしながらフェイトは大剣を振るい、スカリエッティの創りだした結界を切り裂く。
フェイトはまだ切り札を残していたが、それを使用することは考えもしなかった。
ただ持っていた武器で襲いかかったのだが、大剣は障壁を傷つけることは出来なかった。
弾き飛ばされた大剣が結界内を転がった。

スカリエッティはフェイトの傍まで歩いてくるとしゃがみ込んだ。
フェイトは、睨みつけながら手探りでバルディッシュを掴んだ。

「しかもその後ドメスティックバイオレンスに走るほど馬鹿だとはね……心優しい母親だと言う報告だったのに。見かけによらないものだよねぇ。

私もドン引きさ。話を変えたくて話題にしたのがジュエルシードでね。乗ってきたから情報をリークしてあげたよ。

まさか本気でアルハザードを目指すなんて、キチ…ああ失礼、余りにも斜め上な反応だったから予想できなかったんだ」

大剣型…ザンバーフォームのバルディッシュがスカリエッティの声を遮るようにカートリッジを何度もリロードする。
連続で吐き出された薬莢が、障壁にぶつかって彼女の体に当たった。

だがそんなことは、この状態で魔法を使えばどうなるかや他にこの檻を破壊するのに適したフォームの存在があることは…どうでもよくなっていた。
高速で展開される儀式魔法によって発生した雷が、バルディッシュの刀身に蓄積していく。

「昔話はこれだけかな。研究中にストップをかけてあげるか、君を作ろうとしていた段階で力尽くでも止めてあげれば、まだプレシア生きてそうじゃないかい? (君にとっては)『失敗作が出来る』からって」
「雷光一閃ッ!!」

雷光を伴った強力な砲撃が檻の中を満たし、もっと広い空間へと溢れだそうと暴れ狂った。
スカリエッティが創りだした結界を破壊するには適していないのか、無害な光ばかりが室内を明るくした。

「だからさ、管理局はおろか犯罪組織にさえ所属していない君達だったが、素早く情報を手に入れられただろう。何かわからないことはあるかい?」

光はどんどん強くなっていく。
結界に微かな揺らぎを見つけたスカリエッティは、もう片方のグローブを嵌めた手を翳し、檻を二重にしてそれは収めた。

それでも結構な光量を持った巨大な電灯を見て、いたずら心が働いたのかスカリエッティは目を押さえた。

「ああそうだ。こうするんだっけ? あーコホンっ」

咳払いを一つして、スカリエッティは仰け反った。

「あ〜がぁ〜!! あ〜あ〜目がぁ〜目がぁ〜!! あ〜あ〜目がぁ〜あ〜あ〜……ククク、ハハハハッなんてね」
『ドクター』
「あ、ウーノかい?」
『お約束通り私はそろそろ手を引かせてもらいますわ』

そう言ってウーノは光が収まっていく二重に作られた結界を見つけ、咎めるような目をした。

『流石の私も、悪趣味さではドクターには遠く及びませんわね』
「ええっ!? まだ結界の周りをぐるぐる回りながら『ねーねー今どんな気持ち、どんな気持ち?』さえやってないんだが」
『……その時は、貴方が創造主なんて恥ずかしくて言えなくなりますわ』

本気か冗談の延長か、長年付き添ってきたウーノにも判断の難しいスカリエッティに、ウーノはかなり本気で引いていた。

「コホン…で、どうかな聖王陛下は」
『順調です。エースオブエースに勝てれば、ですが』

そう言ってウーノは、今回最後の仕事となるかもしれない作業…玉座の間や、地上の様子を確認できる通信画面を開いた。
リリカルなのはクロスSSその111
240 :リリカルな黒い太陽 二十三話[sage]:2010/10/04(月) 21:49:39 ID:Wp/42Gsb


その頃玉座の間では、ヴィヴィオがなのは達など気にも止めずに作業を続けていた。その場にいないとでも言うように、目を向けようともしない。
ミッド中に雷の雨を降らせながら、ヴィヴィオは通信画面に映るRXの黒い表皮の上を走る雷を見つめていた。

「ヴィヴィオ止めて! そんなことしちゃだめだよ! 一緒に帰ろう!!」

言われて、ヴィヴィオはなのはに視線を向けた。
無関係な子供と、その周囲を巻き込む雷を放ちながら。
次の雷を用意し、より精密にRXの表皮を焼き体内を狂わせる雷を放つために修正を行ないながら。

「邪魔をしないで。ドクターの仕事が終わるまでそこにいるだけでいいから」
「駄目だよ! ヴィヴィオがしてるのは悪いことだよ! 子供を狙って魔法を使うなんて…何か理由があるなら私に教えて!」

説得しようとするなのはに比べて、シグナムとヴィータには余りそのつもりはないようだった。
なのはは臨戦態勢を取る二人とヴィヴィオの間にレイジングハートを翳し押しとどめる。

「教えてくれれば、私達が助けてあげられるかもしれないし、もっといい方法だって、見つかるはずだよ!」
「静かにして!」
「なのは無駄だ! どうせアイツが洗脳してるに決まってる。先に止めちまわないと」
「そんなことない! ヴィヴィオは、スカリエッティに唆されてるだけなんだから。ちゃんとお話すれば、」

諦めようとしないなのはの肩をシグナムが掴んだ。

「高町。気持ちはわかるが、ヴィータの言うこともあながち間違いじゃないはずだ。ヴィヴィオの中にレリックの反応がある……」

そう言うと、それ以上なのはが説得を始める前にシグナムはヴィヴィオに突っ込んでいった。

「それに、いつまでもRXに我慢させ続けさせられるか」
「だな……っ!」

走りだすシグナムにヴィータが続いた。

「ああもう……レイジングハート!」
『Yes my master』

レイジングハートが、なのはの命令に従い魔法陣を、そして桜色の光を周囲に振りまく。
二人の動きをサポートする為になのはのアクセルシューターが、後を追いかけていった。
まだ迷いがあるのか、精彩を欠く光弾をヴィヴィオは無視した。

続くシグナムの鋭い連撃と、ヴィータの重い一撃も危なげ無く回避する。
顔色一つ変えずに回避しながら雷を放ち続けるヴィヴィオに、二人は徐々に本気になっていった。
床に落ちていく薬莢を、飛び散った火の粉が溶かす。
次の瞬間に繰り出されたフェイントを交えた4回の斬撃、ロケットのように後ろに火を噴射して加速したハンマーはヴィヴィオの急所を狙っていた。

だがそれでも掠りもしない。
途中まで呼びかけていたなのはも、それには驚き、制御下にある光弾を牽制から、より攻撃的な動きに変えていった。

なのはの気持ちの変化を、周囲を取り囲もうとする光弾の動きから感じ取ったのだろう。
ヴィヴィオはなのはを見た。
そして、左右から迫るシグナムとヴィータ、なのはの操る光弾を視界に納めて…ヴィヴィオは攻勢に転じた。

「その動きなら知ってるよ」

襲いかかる赤い塊。振り上げられたハンマーを見ようともせずに、ヴィヴィオは軽い足取りで自然にヴィータの懐へと入っていった。
丁度いい所にきたヴィータの顎が膝で打ち上げられる。彼女のグローブを嵌めた指がグラーフアイゼンを握る手を掴み、迸る虹色の光が圧力を掛けて握り潰した。
顎に加わった衝撃に加え、片手が潰れたヴィータの手からグラーフアイゼンを奪ったヴィヴィオは、ヴィータと連携を取り襲いかかろうとしていたシグナムへ踏み込んだ。

「ヴィータッ!!」
「吠えて、グラーフアイゼン」
リリカルなのはクロスSSその111
241 :リリカルな黒い太陽 二十三話[sage]:2010/10/04(月) 21:52:23 ID:Wp/42Gsb
ヴィヴィオの命令に従ってグラーフアイゼンからカートリッジが吐き出された。
虹色の光が放たれ、火を吹いたハンマーが、シグナムへと振り下ろされる。
弧を描き、途中軌道上にあったアクセルシューターを幾つか叩き落としたことさえ物ともしない一撃を叩き込む動きは、ヴィータのものと酷似していた。

予想外の動きに一手遅れたシグナムだったが、それでも辛うじて鞘を盾にすることが出来た。
鞘と、衝撃を受け止めるために足を付けた床がひび割れていく。
驚愕するシグナムへ叩き込まれたグラーフアイゼンは、更にカートリッジ・リロードを繰り返していた。
二度、三度と勢いを徐々に増すハンマーの勢いに片膝を付いたシグナムへ、ヴィヴィオは容赦なく砲撃を行おうとする。

ヴィヴィオが何をしようとしているか知ったなのはも、慌ててレイジングハートを構えた。

「「エクセリオン、バスター!!」」

ほぼ同時に照射された桃色の破壊光線は、ヴィヴィオの影を捉えることも出来ずに床を貫いていった。
当たる直前に、フェイトのソニックムーブを使ったのだとなのはは直ぐに理解した。
周囲を警戒するなのはがヴィヴィオを見つけると、その手にはレヴァンティンが握られていた。

カートリッジが吐き出され、レヴァンティンが幾つもの節に分かれた蛇腹剣へと形態を変える。
魔法のデータを収集して、自らのものとするとは聞いていたが、それどころか他人のデバイスまで使用できるらしい。

「王が騎士の物を使えるのは当然でしょ。ミッドチルダではどうか知らないけど」

なのはの考えを否定するようにヴィヴィオが言う。
虹色に燃える刃が生き物のようにうねりだす。
床を削りながら浮かび上がった刃がなのはのアクセルシューターを叩き落としながら、なのはへと迫る。

「ベルカには、騎士に劣る王なんていない」

レヴァンティンの刃は本来の主であるシグナムが振るう時と変わらない軌道と速度でなのはに迫って行った。
回避しきれなかったそれをプロテクションEXで時折弾き返しながら、なのはは空中に逃れていった。

自分達が侵入した穴から断続的に入る音と光は今も絶えずなのはの眼と耳に届いている。
同じ魔導師として信じがたいが、ヴィヴィオはシグナム達の攻撃を受けている間も、今もずっと、RXに雷を落とし続けるだけの余裕があるのだ。

そう考える間にも、見覚えのあるバインドが起き上がろうとする二人を拘束していく…魔法が発動する瞬間にだけヴィヴィオの表情に一瞬、変化があった。

なのははそこに活路を見た気がした。






「なんだ。聖王陛下は思ったよりも強いじゃないか」

攻防を眺めていたスカリエッティはそう感想を言って、ヴィヴィオから視線を外した。
ヴィヴィオは、起き上がろうとするシグナム達を再び破壊光線でなぎ払い、なのはのアクセルシューターもレヴァンティンの刃でたたき落としていた。

「あ、そろそろ落ち着いたかい? 落ち着いたなら最初の提案なんだが、フェイト・T・ハラオウン執務官。

私の要望が受け入れられるまで人間の盾になってくれたら私の命を差し上げてもいい」
結界の中に横たわるフェイトにスカリエッティは言う。

「君達とは今後とも仲良くしていくことになるからね」

フェイトが耳を疑っていると、スカリエッティはそれに気づいて勝手に補足を始めた。

「ええっとね…先程言ったアリシアを生み出す技術を使って用意した私のコピーがあってね。

こちらの私はあれば嬉しいがなくても困らない、言わば用済みなのさ。だから遠慮はいらないんだ。それで手打ちにして仲良くしないかい?」
リリカルなのはクロスSSその111
242 :リリカルな黒い太陽 二十三話[sage]:2010/10/04(月) 21:54:17 ID:Wp/42Gsb
フェイトは、口の中に溜まった血を吐き捨てて体を起こそうとする。

「…誰が、貴様なんかと……!!」
「でも君達は管理局や教会から手を切れないだろう」

意味がわからなかったが、フェイトは睨み続けた。

「どうせ、仲良くするのはうまく行けばの話さ。だがうまく行ったら私は管理局に所属し聖王と君達を利用してRXと組む予定だ。妹を見捨てられるなら違う方法を使う」

スカリエッティの言ううまく行った時ヴィヴィオは聖王教会に行ってしまい、そんなヴィヴィオを一人残してフェイトやリンディ、クロノは関わらないようにすることなど出来ない。
管理局と教会は、スカリエッティを無碍に扱うことはできなくなっているだろう。
だから我慢してスカリエッティに協力しろということらしい。
かわりにスカリエッティは今の自分の命や今後のフェイト達にやろうとしていることに手心を加えると。

だがフェイトはそれを一笑に付した。そうは思わなかった。
スカリエッティの目的はRXなのだろうが、RXなら、そんな状態になれば自分達でも切り捨てることもありうると、思ったのだ。

「だからお互い妥協しようじゃあないかと言ってるんだよ。とても簡単に説明したと思うんだが、もう少し詳しく言わないとわからないかい?」

だが同時に、スカリエッティの言う要請が、言葉通りのものとも思えなかった。
それだけでは済みそうにない。言葉の裏にある不気味なものをフェイトは感じ取っていた。

「私の考えだと、逮捕された私は非常に協力的になって君達が知らない私が関与した犯罪も洗いざらい話す。

自由を手に入れて、君達に要請できる立場になるま10年かからない。もう一人の僕ならもっと早いな」
「………そんなことは、させない! お前を、外になんて出すものか!!」

想像を膨らませ、情熱的に言うスカリエッティ。
得体のしれない彼に嫌悪を感じたフェイトは四肢に力を入れて立ち上がった。

戦っているなのはとヴィヴィオの姿を映す画面が、フェイトにも見えた。

スカリエッティを封じ込めなければ、家族に類が及ぶ。
仲間も、RXも巻き込んでいく。

「例えば君等が一度見逃したギル・グレアムの名前が挙がっても私と一緒に裁判にかけるかい? 協力的な私はちゃんと彼の余罪も吐くが」

ギル・グレアム…昔、今もはやて達に白い目を向ける者がいる原因となっている事件に関係したクロノ達の友人の名前だ。
この場で言うからには、何か用意があるのだろう。

「君達は何件見逃すのかな」

各人の弱みにつけ込み、負い目を増殖させていく…
そんなことは絶対に、させられない。

暴走しそうになる感情を、画面に映る家族の姿を見て抑えつけたフェイトは落ちていたバルディッシュを掴んだ。

感情をほんの少しの時間抑えこみさえすれば、スカリエッティの排除は簡単だ。

主人を止めようともしなかったバルディッシュにモードチェンジを命じれば…

機械的な音声で返答が帰り、バルディッシュは二つに分れた。大剣から、光の紐で繋がった双剣に姿を変え、金色の刃が伸びる。
刃が伸びていく途中でスカリエッティの結界は容易く貫かれ、
マントを捨て、バリアジャケットも制服に近い形から、体にフィットしたボディスーツへと変えたフェイトが腕を横に振るった。

金色の軌跡を残しながらバルディッシュの刃は結界を切り裂いていった。
ガラスが割れたような音を立てて、切り裂かれた結界が砕け散っていく。
空気に溶けて消えていく結界を構成していたエネルギーが、巨大な結晶の光りに照らされてキラキラと光りを放っていた。

「貴方が、何をしてもあの人の邪魔は、させません…私達が、私が貴方の好きにはさせない!」
リリカルなのはクロスSSその111
243 :リリカルな黒い太陽 二十三話[sage]:2010/10/04(月) 21:56:53 ID:Wp/42Gsb
もう二人を遮るものはなかった。
今度こそ、フェイトはスカリエッティが何をしようとしても排除できる。
今バルディッシュを横に振れば、スカリエッティの殺害も出来る。

だが、それにはフェイトが更に非殺傷設定を解除しなければならない。
スカリエッティは余裕の態度を崩さずに自分の胸に手を当てた。

「では逮捕したまえ。後はナンバーズと聖王陛下をどうにかすれば、今回の事件は解決さ。数年後同じ局員として一緒に仕事が出来るのを楽しみにしてるよ」
「絶対に阻止してみせるから」
「?……新しく生まれる予定の僕も、犯罪者じゃなく君達の後輩として、管理局に入局する」

フェイトは憎しみを抑えつけながら、スカリエッティにバインドを施していく。
今聖王の間で、シグナム達を拘束している魔法と全く同じものだ。

スカリエッティは肩を竦めるだけで、抵抗はしなかった。

代わりに頭の中で結果を考え、大体の目的は達成できたようだと考えていた。

巨額の予算を手に入れ思う様研究したいという欲望を満たせないのは残念すぎるが、ナンバーズの優秀さはそこそこ見せられただろう。
それにスカリエッティでさえ手にかけることができない彼女等では新しいスカリエッティを排除することは出来ないことはわかった。
自分とはいえない、ある意味子供のような存在は、容易く彼女等を取り巻く人物と交友関係を作りどんな手を使ってでもRXへと近づいていくだろう。

「まずは君が引き取った孤児のデータから調べることをおすすめするが…」

最もこれで聖王がなのはとRXに勝ち、全世界にナンバーズを配備することになっても別段スカリエッティは構わないのだが。

「見つけられたとしたって(厳密には違うが)僕のコピーだから、なんて理由では排除できないんだぜ?」


フェイトは非殺傷設定のバルディッシュでスカリエッティの体を打ち上げた。
さながら野球のホームランボールのように、打ち上がった体は背後で輝き続ける水晶へと叩きつけられた。




ヴィヴィオに捕まり、捕らえられるのが先か。

私の全力が、ヴィヴィオの処理力(ショリヂカラ)を越え、ミスをするのが先か…

「レイジングハート。ブラスターモード!」

叫ぶ間に迫ったレヴァンティンの刃を横合いからの射撃で逸らす。

新機能「ブラスターシステム」は、私とレイジングハートの「最後の切り札」。
私自身の外見的な変化は余り無いけど…使用者、デバイス、双方の限界を超えた強化がこのモードの主体。

私の周りには、四基のビットが浮かんでいた。

もしかしたらまた飛べなくなるほどのダメージを負う可能性もあるけど、躊躇する気持ちは欠片もない。

私の考えが読めたのか、ヴィヴィオの仕草に恐怖が微かに見えた。

微かな怯えでも私には手に取るように理解できた。
教導隊の先達達の何人かと同じ反応だったから。
リリカルなのはクロスSSその111
244 :リリカルな黒い太陽 二十三話[sage]:2010/10/04(月) 21:58:48 ID:Wp/42Gsb
出会った頃のレイジングハートだったら止められてたと思う。
でも、長年連れ添った今のレイジングハートは、逆に頑張って死なないギリギリを見極めようと動いてくれていた。

そんなレイジングハートを信頼し、私は何回全開射撃を行うか考えながら、杖を構えた。
視界の隅っこで、必死に拘束を逃れ、反撃を行なおうとしている二人が止めろと叫んでいた…

「大丈夫! だって…」

心配性の友人ばかりなので明かせなかったが…入隊直後から、自分の身を省みずに勝つだけなら、教導隊の誰にも教わる必要はなかった。

「ヴィヴィオ、ちょっとだけ、痛いの我慢できる?」

ヴィヴィオがこれを既に知っていて、コピーしているならそれはそれでいい。
魔力タンクを抱えていても、既に超高度な魔法を連続して行っている状態から更に、私の最も強力で制御の難しい魔法を使うことになる。
一つでもミスすればRXが乗り込んできて二対一になる分私が有利だと思った。

ヴィヴィオが今頃になってレヴァンティンを投げ捨てた。
けれど、もう私の周囲に浮かぶビットが桜色の光で玉座の間に埋めていく。

「まずは追い込むよ。その後は、『防御を抜いて、魔力ダメージでノックダウンですね。マスター』そう、いけるね! レイジングハート!」
『Yes my master』
「エクセリオンバスター」

四基のビットから放たれる破壊光線をヴィヴィオが難なく避けた。
床や壁が撃ちぬかれ、破片が飛散る中でも、私はその姿をはっきりと捕らえていた。

だけど逃れる選択肢は、屋外に比べてとても少ない。
その分こんな近距離で戦うのは私に取ってとても不利に働くけど……
小学生の頃から砲撃魔道師だった私にとっては、誘導することはとても容易い。

私の魔法は一時的に玉座の間を二つに分けた。
エクセリオンバスターの光に隠して放っておいたアクセルシューターがヴィヴィオを追いかける。
追いかける光球の数は4つ。ヴィヴィオが逃げると思った幾つかの範囲へ分けて放っていたから、まだ4つだけ。

それ位じゃ難なくかわしてしまうヴィヴィオの方へ、ビットの位置を変えて私は間髪入れずに二発目を撃つ。
でも良かった。RXみたいなことをされたら焦ってたかもしれない。

「エクセリオンバスター!」

再び、今度は少し範囲を広げてある。
四基のビット、そして少し時間をずらして私の持つレイジングハートからも桜色の光線が放たれた。

シグナムとヴィータなら避けられるはずだし、二人のことは考えないようにする。

悲鳴が聞こえたような気がしたけど…
射撃と爆発、リロード、それに私自身の声でかき消されたはず!

うん、聞こえてないから!

やっぱりヴィヴィオはフェイトちゃんと同じか、それ以上に早い。
不慮の事故でちょっと気が散ってしまった間にもヴィヴィオは一度目より狭まった空間の中を上手に逃げてる。

さっきの倍になったアクセルシューターの光球がヴィヴィオを追い込んでいく。

時々フェイトちゃんとそっくりな動きをしてるから、そこを狙い撃つの。
そう思ってたんだけど、運良く光球の一つが、ヴィヴィオの足を掠った。

悪いけど、狙い撃つの!

「エクセリオン、バスター!!」
リリカルなのはクロスSSその111
245 :リリカルな黒い太陽 二十三話[sage]:2010/10/04(月) 22:02:42 ID:Wp/42Gsb
ゆりかごが破壊されるのを嫌ったのかな?

まだ逃げられたはずだけど、アクセルシューターの一つに引っかかっちゃったヴィヴィオはエクセリオンバスターの一つに当りながら遮二無二向かってきた。

でもそのせいで、さっきよりずっと当てやすい。
今回はまだ私のレイジングハートからは、撃っていない…
光線に晒されながら向かってくるヴィヴィオに、私は素早くレイジングハートを向けて、エクセリオンバスターを撃った。

それでもまだ、全然足りなくて二つの桜色の光が交わる場所から、ヴィヴィオが抜けだそうとする。
だから光の中から出ようともがくヴィヴィオの手や足を、32個の光球で頑張って押し戻さないとダメだった。

するとまた虹色の光がヴィヴィオの体から溢れて、アクセルシューターを吹き飛ばしていった。
凄い能力だと思う、でも、足が止まっちゃってる。

私は気にせずビットのエクセリオンバスターを集めていった。

思っていたより少ない手数で、私の射撃魔法はヴィヴィオを捕らえる事が出来たみたい。
後は、底が見えるまで打ち続けるだけだった。

エクセリオンバスターとは別に…レイジングハートのカウントはもう始まっていた。

もうゆりかごの外と内で使用された高度な魔法の残滓が集められていた。

体が軋んで、杖を持つ腕から痛みが走り出した…けど、まだヴィヴィオの防御を抜いてさえいない!

「今日二度目の、全力全開!! スターライトブレイカー!!」

玉座の間から溢れた光が侵入した穴や、これまでの魔法で破壊された場所から外を照らしていく。
バリアジャケットが自動的に、光と音から眼と耳を守ってくれる。
そしてレイジングハートは、スターライトブレイカーに晒されながらヴィヴィオがゆっくりと近づいてくることを教えてくれる。

対抗するために、私の意思を汲み取ってレイジングハートが勝手にリロードを開始した。




二十三話は以上です。
内容の割に時間がかかりすぎ…
スカリエッティとフェイトの戦いは逮捕後が本番になりそうな感じにしたかったなと
ナンバーズの話が難航して次話にもちこしてしまいました。申し訳ないです





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