- 意味不明な発言をしてストレスを発散するスレ23
131 :名前は誰も知らない[sage]:2014/07/27(日) 08:40:45.08 ID:oDPj+yYpO - 煮沸したラケットについてまくし立てる僕を、少女は困惑げな表情で見つめていた。
白人だけれど髪も目も黒く、どこかオリエンタルな雰囲気のある少女だった。 「それで、その像がでしね」 興奮が僕の舌をもつれさせる。自分でも、電気関係の会社に勤務していると、あやうく信じそうになっていた。 (ばかな、そんなはずはない)煮沸ラケット話の勢いはそのままに、胸のうちでかぶりを振る。落伍者には落伍者なりのプライドがあった。 名女医とメイジェイを使って、なにか気の利いたダジャレができないか、そればかりが頭をよぎる。 平日の喫茶店にはほかに客の姿はなく、少女と僕の貸切状態になっていた。 そうした状況の退屈さとも相まって、ダジャレは予想外の展開を見せた。 「待ったか、マツタカコ」「ここにいたのか、イタノトモミ」 ダジャレの体すらもなしていない戯言である。そのうえものすごくつまらない。そうおっしゃる向きがあることは重々承知している。 だが自分で言うのもなんだが、ここには向こう見ずな若さのきらめきと、論理の超飛躍ともいうべき知性の閃きが、確かに感じられはしないだろうか。 「煮沸したラケット、という記述がある。つまりイカロスだ、分かるね?」
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134 :名前は誰も知らない[sage]:2014/07/27(日) 14:42:30.49 ID:oDPj+yYpO - 「私はサコー神。より良い社会をつくるため、日々がんばっていますっ」
叫びながら、俺はひどく安定の悪い椅子へ腰かけ、必死にバランスをとっていた。 より良い社会うんぬんというのは、むろんサコー神を持ち出すための方便にすぎない。そもそもこの俺は「私」なんて柄じゃなかった。 自分のことを私などと呼ぶ奴は、オカマかウルトラマンに決まっている……と、ほんとぐらぐらするな。 それでもこうして椅子曲芸をやっているのには、それなりのわけがあった。 「……こんにちの社会において、もっともこん……あっ、あぶないっ!」 ドンガラガッシャーン、ゴツン、ガツン。 次に目を覚ましたとき、俺は看護婦さんの腕の中にいた。 「気がついた、サコーさん」 「な、なぜその名を」 「だってあなた、社会に対して不満がありそうじゃない」 「い、椅子は、私の椅子はどこだ」 「落ち着いて、サコー。あの危険な椅子なら処分したわ」
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136 :名前は誰も知らない[sage]:2014/07/27(日) 21:10:01.80 ID:oDPj+yYpO - まだ少し痛む頭をさすりさすり、俺は病院を後にしていた。
当初の目的どおり、まんまと危険な椅子を処分することはできたのだが、気分はいまひとつ晴れなかった。 「すこし、まわりくどかったか……」ひとりごちながら先程の看護婦との会話を思い出す。 「ええ、ただの脳震盪ですから、このままお帰りいただいてかまいません」 「お手数かけました。で、あの、お金のほうは……」 「あ、そちらはもう、イサオ様からちょうだいしています」 「イサオ?」 「はい、ラグビー選手と自称していましたが……お知り合いじゃないのですか」 「ラガーマン……」 激しく頭を振り、こみあげてくる何かを振り払う。全身に鳥肌が立っていた。 ばかな、自らをサコー神と偽ってまで、あの椅子を始末したというのにこのざまか。 「くそっ」力任せに石ころを蹴飛ばす。路上を転げていくそれが、俺自身の運命を暗示しているかのようだった。 足下がやけにふらつく。もしかしたら俺はまだ、安定感の悪い椅子の上にいるのかもしれない。
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