- AKB大島「あたしが犯人を逮捕します!」
59 : ◆x1G.Xq6aH2 [sage]:2013/07/26(金) 11:04:01.60 ID:3JEpidkd0 - 渡辺「さっしー!!」
渡辺は走った。 しかし指原は物凄いスピードで後退していく。 追いつけない。 そしてついに指原は通路の突き当たりを折れ、その姿は完全に渡辺の視界から消える。 直後、断末魔のような声が響いた。 ――何が起きてるの…? 渡辺の心臓が早鐘を打つ。 一歩一歩を躊躇する。 確かめるのが怖い。 向こうからは、もう指原の声や物音が聞こえなくなっている。 博「俺が行くよ」 立ちすくむ渡辺を追い越し、博が先に突き当たりの向こうを確認する。 渡辺「博くん?どう?さっしー見つかった?」 渡辺は震える声で問いかけた。 博の返事はない。 渡辺「博くん、どうしたの?」 不安に押しつぶされそうになる。
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60 : ◆x1G.Xq6aH2 [sage]:2013/07/26(金) 11:05:05.05 ID:3JEpidkd0 - 博「来ちゃ駄目だ…。麻友ちゃん、見ないほうがいい」
渡辺「え?」 反射的に、渡辺は突き当りの向こうに顔を出してしまった。 渡辺「ハッ…」 変わり果てた姿の指原が、そこにいた。 床には血らしき液体が広がっている。 誰の仕業か、彼女の右肩には斧が突き刺さっていた。 渡辺「さっしー!どうしたの?何があったの?」 思わず駆け寄ろとした渡辺を、博が制止する。 渡辺「放して!さっしーを…さっしーを助けなきゃ…」 博の腕の中で、渡辺は必死にもがく。 だが所詮華奢な渡辺が博にかなうはずもなく、差し出した右手が虚しく宙を掻くばかりだった。 博「もう…手遅れなんだよ…」 博が静かに告げる。 渡辺は声にならない声を上げ、泣きじゃくった。
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61 : ◆x1G.Xq6aH2 [sage]:2013/07/26(金) 11:08:02.57 ID:3JEpidkd0 - 【GIANT MONSTER KITTY ALIEN】
柏木「あはは、専務お上手ですね…」 乾いた声で言う。 そろそろ顔の筋肉が限界に近づいてきた。 専務のつまならい話に付き合うのは本当にしんどい。 柏木は髪をかき上げるふりをして、密かに壁の時計を確認した。 ――そろそろ解放してくれないかな…。あたし早く帰りたいんだけど。 しかし専務の話をまだまだ終わりそうになかった。 柏木が新たに淹れ直したコーヒーに口を付けず、夢中で喋り続けている。 柏木「はぁ…そうですね…」 最早適当以外何物でもない相槌。 専務「あ!あれは何かな?」 退屈しているのが伝わったのか、専務は突如、柏木の気を引くような声を上げた。 血相を変えて窓の外を指差す。 柏木「あぁはい…」 柏木は面倒臭げに返事をすると、窓の外に目をやった。 特別変わりはない、見慣れた風景だ。 左手に保険会社の入ったビル。 その斜め後ろに見えるのが老舗デパートの看板で、そこからさらに視線をずらすと小さく高速道路が確認出来た。 そして高速道路を跨ぐようにして歩いているのが巨大怪獣――。
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63 : ◆x1G.Xq6aH2 [sage]:2013/07/26(金) 11:08:54.69 ID:3JEpidkd0 - 柏木「え?怪獣?」
柏木は思わず窓に貼り付き、何度も瞬きをしながらその姿を確認した。 自分は夢でも見ているのだろうか。 映画や漫画の世界じゃあるまいし、この現実に、果たして怪獣が存在するものか。 専務「まずいな…こっちに向かって来てるぞ」 いつの間にか、専務が隣に立っていた。 大都会に突如現れた巨大怪獣。 なんともシュールな光景である。 しかし今はその特異さを楽しんでいる余裕はない。 あれに近付かれて、危険はないのだろうか。 これまた特撮映画のように、火を吹いたり、暴れまわって街中めちゃくちゃに壊して回ったりするのだろうか。 何にせよ、今はあの怪獣と距離を置いたほうが良さそうである。 柏木「とにかくここを出ましょう」 専務「下に僕のスポーツカーがとめてある。それに乗ってここから離れよう」
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64 : ◆x1G.Xq6aH2 [sage]:2013/07/26(金) 11:10:38.11 ID:3JEpidkd0 - 【SUPER MEGA COP STORY】
対象者が尾行に気づいた様子はない。 大島「…ここに何があるの…?」 対象者がやって来たのはありふれた外観のビルで、入り口付近をうろうろした後、向かいの喫茶店に入ってしまう。 大島も後を追って入店しようと思ったが、小さな店である。 中に入れば必ず対象者と顔を合わせることになりそうだったので、しばらく外から様子を見ることにした。 対象者が座った席は運良く窓際である。 道路を挟んで監視する大島には、その動きがよく確認出来た。 ――このビルを、気にしてる? 対象者はゆったりとティーカップを口元へ運びながら、ひとりの時間を過ごしている。 しかし大島にはそれが取り繕った姿に思えてならなかった。 その証拠に、時折ちらちらとビルのほうを盗み見るのだ。 大島「やっぱりここに何かあるんだ…」
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65 : ◆x1G.Xq6aH2 [sage]:2013/07/26(金) 11:11:21.46 ID:3JEpidkd0 - 大島はビルの中を捜索してみることにした。
対象者が下を向いた隙に素早く入り口を通り、警備員に警察手帳を見せる。 エレベーターの横にいくつかの社名が並んでいた。 そのどれもが怪しげに思えてきてしまう。 横文字を羅列するばかりの社名は、それだけで業務内容をはかり知ることが出来ず、厄介だった。 大島はそのまましばらく、社名のプレートを睨んでいた。 しかし途中でエレベーターから男女の2人組が下りて来たので、さっとその場を離れる。 2人組は普通の勤め人に見えた。 怪しげな仕事をしている雰囲気ではない。 大島は手始めに1階部分のテナントを見て回ることにする。 大島「見たところ普通のビル…何にも怪しい所はないな…。次は2階へ行ってみるか」 大島の捜査は続く。
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66 : ◆x1G.Xq6aH2 [sage]:2013/07/26(金) 11:12:52.53 ID:3JEpidkd0 - 【SUPER MEGA COP ANOTHER STORY】
梅田「遅いよ」 待ち合わせ場所に、篠田と宮澤は15分遅れで姿を現した。 すでに到着していた梅田に怒られながら、篠田は紙袋を差し出す。 大きさのわりに、紙袋は軽い。 宮澤「麻里子が変にこだわるから遅刻しちゃった」 篠田「だって大事なことじゃん。それより梅ちゃん、珠理奈はどうだった?」 梅田「ちゃんと映画館まで送り届けたよ。ポップコーン買ってあげたらはしゃいでた」 宮澤「怪しんでなかった?」 梅田「大丈夫だと思う」 篠田「よし、それじゃあ映画が終わるまでにちゃちゃっとお仕事片付けちゃいますか」 篠田がパンッと両手を合わせながら言った。 最近の珠理奈は篠田達の仕事に首を突っ込みたがっている。 日々の暮らしの中で、彼女がうずうずしているのを感じる。 しかし珠理奈を違法な仕事に巻き込むわけにいかない。 間が悪いことに今日は土曜日で学校が休みのため、自分達から珠理奈を遠ざけておく必要があった。 そこで篠田は梅田に頼み、うまく珠理奈を連れ出してもらっておいたのだった。 今頃、見たがっていたハリウッド映画に、夢中でスクリーンを眺めているはずだ。 篠田達にとっては、その映画が終わるまでの2時間20分が勝負である。
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81 : ◆x1G.Xq6aH2 [sage]:2013/07/26(金) 12:54:59.14 ID:3JEpidkd0 - 横山「彼女はわたしの所属する部隊の隊長、峯岸さんです」
峯岸は真っ直ぐ横山の前までやって来た。 峯岸「八つ橋、どうだ?」 横山「車に乗っていた2名を無事救出しました」 横山が敬礼のようなポーズを取った。 柏木「あの、八つ橋って呼ばれてらっしゃるんですか?」 横山「コードネームみたいなものです」 柏木「へ、へぇ…」 峯岸「今からあなた方をシェルターまで誘導します。以降、我々の指示に従ってください」 峯岸は今度、柏木に顔を向けた。 峯岸「何をニヤニヤしてるんです?」 そうして柏木の反応に、怪訝な表情を浮かべる。 柏木「い、いや、だってあんまりボスっぽくないから…あ、ごめんなさい、いい意味でですよ?」 柏木は手で口元を押さえ、必死に笑いを引っ込めようとした。 峯岸は丸い目をした可愛らしい顔立ちをしており、とても隊長などと呼ばれる人間に見えない。 それに対し、怒りを露にしたのは峯岸本人でなく、横山のほうだった。
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82 : ◆x1G.Xq6aH2 []:2013/07/26(金) 12:55:42.90 ID:3JEpidkd0 - 横山「ボスは尊敬に値する方です。戦闘服の下にボスTシャツを着ているほど、根っからのボスなんですよ」
柏木「あ、それ戦闘服なんですか?」 てっきり2人とも戦隊ヒーローもののコスプレでもしているのかと思っていた。 横山「それ、今気にすることですか?違いますよね?柏木さん、失礼な発言をしたことをボスに謝ってください」 峯岸「八つ橋、そう熱くなるな。わたしはもういいから…」 横山「駄目です!柏木さん、謝ってください」 柏木「え?あ、すみませんでした…」 横山「峯岸さん、本人もこう言ってますし、許してあげてください」 峯岸「いや別にわたしはじめから怒ってないから。柏木さん?なんかごめんね、うちの隊員が」 峯岸がくしゃりと笑う。 人懐こい笑顔。 それに対して、横山は生真面目な表情を崩さない。 本当にこの人達についていけば、無事怪獣から逃れることは出来るのだろうか。 柏木はまだ半信半疑である。 柏木「それであの、お2人は自衛隊の方なんですよね?」 横山「地球防衛軍だと先ほど説明しましたが?」 柏木「……」
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88 : ◆x1G.Xq6aH2 [sage]:2013/07/26(金) 14:14:04.96 ID:3JEpidkd0 - 渡辺「全員揃ってる?」
渡辺はすぐさまソファから立ち上がると、仲間達を見回し、腕を組んだ。 指原「います!」 指原がびくびくと返事をする。 渡辺「よし、それならいいよ。でも返事をする時はもっと可愛くね!猫背は直して。わたし達のコンセプトは強くて可愛い女の子なんだから。そのこと、忘れないで」 わかりました、と仲間達が口々に返事をする。 全員、赤と白をメインカラーにした衣装姿。 デザイン自体を個々に変化させ、ある者はスカート、ある者はショートパンツといったように、一見するとバラバラなようでいて、全体が集まると統一感が出るように工夫されている。 渡辺は満足気に顎を引いた。 渡辺「今日が勝負だよ。バイクなんて着られる服が限定されていておしゃれじゃないし、うるさくて男っぽくて野蛮な乗り物。あんなチームがこの街のシンボルになるなんて許せない。だから今日は絶対にわたし達が勝つよ!」 愛車のオープンカーに歩みより、渡辺はいとおしそうにその車体を撫でた。 白いカラーはドライバーの着る服を選ばず、そのフォルムからは計算し尽くされたような美しさを漂わせている。 これほど女性的な乗り物が他にあるだろうか。 この街のシンボルとなり、気品高く君臨するのは絶対に自分達のチームしかあり得ない。 ――あの大島とかいう奴が仕切るチーム…あんなのをのさばらせておいたら、またこの街は衰退してしまう…。
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89 : ◆x1G.Xq6aH2 [sage]:2013/07/26(金) 14:15:24.19 ID:3JEpidkd0 - 昔、この辺り一帯は大きな工場地帯だった。
チームに属する渡辺ら少女達は全員、工員の娘だ。 幼い頃から、勤勉に働く両親の姿を見、憧れ、自分もいつか工員となるのだと、当たり前のように思って育った。 少女達には、はなから街を出ようという気はなかった。 この街が好きだった。 工場の煙突から排出される煙で常に空気は濁り、街を囲むように黒い川が流れ、知らない人間から見たらただの汚い、ありふれた街かもしれない。 それでもここで生活する人々は笑顔と希望に満ち溢れていた。 人の温かさを感じられる街。 通りを歩けば誰でも気さくに挨拶し合い、助け合いが当たり前の街。 だがある日、平和な街は一変する。 その分野での研究が大きく進み、作業はより簡略化、機械化された。 昔ながらの工場は、まるで砂の城を蹴散らすように、呆気なく潰れていった。 街は仕事を失った人間で溢れ、そうした人々はやがて職を求めて別の街へと移るようになる。 空家と廃工場ばかりが並ぶ、死んだ街になるまで、そう時間はかからなかった。 それでも過去の夢が忘れられず街にとどまった人間達は、絶望感に押し潰されそうになる毎日を、必死に生きた。 だがそれも、最近では限界に近づきつつあった。
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90 : ◆x1G.Xq6aH2 [sage]:2013/07/26(金) 14:16:20.54 ID:3JEpidkd0 - 鬱屈とした空気がかつての街を覆い尽くそうとしていたある日のこと、少女達は現れた。
派手な衣装と車で人々を惹きつけ、圧巻のパフォーマンスで見る者の心を奪う。 少女達のライブは街のいたる所でゲリラ的に行われ、事前告知というものはない。 会えるか会えないかは運次第。 そのため、少女達目当てに、連日この街に通い続けるファンが続出した。 寂しかった街が、活気づいた。 何もなかった街には宿泊施設や、少女達に関連した土産店、飲食店が立ち並ぶようになり、それらはすべて仕事にあぶれていた街の住人が運営している。 死にかけた街は急激に潤い、かつての、いやそれ以上の明るさが戻った。 可愛らしい少女達のパフォーマンスが、訪れる人々だけでなく、この街で暮らす人々をも笑顔にさせた。 そしてここから先がいわゆる裏話というやつだ。 渡辺達のようにパフォーマンスを行うチームは、1つだけではない。 街には他にも、主にバイクを乗り回し、男性顔負けのアクロバットパフォーマンスを行う少女達がいる。 一方は渡辺率いる可愛いカーデビルス、もう一方は大島率いるかっこいいモーターガールズ、対極の位置にいるこの2つのグループが、影で潰し合いの大戦争を始めようとしていることはあまり知られていない。 どちらのチームが街のシンボルとして相応しいか。 決着をつける時が近づいていた。 渡辺「さあ、始めようか…」
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92 : ◆x1G.Xq6aH2 [sage]:2013/07/26(金) 14:17:56.73 ID:3JEpidkd0 - 【SUPER MEGA COP STORY】
大島「本多さん!」 フロアの真ん中で、向こうから誰か歩いてきたと思ったら、本多だった。 大島「どうしてここに?」 尾行捜査については大島が単独で判断したことである。 本多には知らせていない。 本多「君をつけてきた」 大島「え?」 本多「ほら大島さん、朝からなんとなくおかしかったから。上の空というか…。会議が終わったら何も言わずに飛び出していくし、心配だったから後をつけさせてもらったよ」 大島「すみません」 大島は顔がカーっと熱くなるのを感じた。 ずっと見られていた。 得意になって尾行し、対象者を追い詰めている感覚に浸り、いざ乗り込んでみたら何も収穫はなく、さてこれからどうしようかと迷っている今の現状。 これら一連の動きを観察され続けていたことと、本多の尾行にまったく気づかなかった自分の馬鹿さ加減が、たまらく恥ずかしかった。 本多「なぜ単独で動いた?」 本多が責めるように言う。 本多「大島さんの相棒は俺だ。そりゃあ手柄を独り占めしたい気持ちもわからなくはないが、」
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93 : ◆x1G.Xq6aH2 [sage]:2013/07/26(金) 14:19:13.13 ID:3JEpidkd0 - 大島「ちがっ、違います!手柄なんてそんなあたし…考えていません!単独で動いたのは謝ります。でも、いまいち確証がなかったから…あたしの思いつきだけで本多さんまで動かすわけにいかないと思って…」
本多「大島さん、俺は相棒になった時から、君を全力で信じると心に誓ったんだ。例えそれが馬鹿らしい仮説でも、徒労に終わったとしてもだよ」 大島「本多さん…」 本多「それで、何を掴んだんだ?ここに何があるんだ?」 大島「はい…」 大島は深呼吸すると、すべてを本多に打ち明けようとした。 大島「まず始めにですね…」 その時、本多の顔がゆらりと近づいてくる。 大島「え?」
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94 : ◆x1G.Xq6aH2 [sage]:2013/07/26(金) 14:21:13.41 ID:3JEpidkd0 - 一瞬、何が起きたのかわからなかった。
続いて肩に感じた重みで、ハッと我に返る。 本多が倒れ込んできたことを知った。 大島「本多さんしっかりしてください!本多さん!え…?」 先ほどまで本多が立っていた位置に、今は別の誰かの姿があった。 大島「誰…?」 問いかけた瞬間、頭に衝撃が走った。 ――殴られた…! 次に感じたのは、硬い床の感触。 すぐさま体勢を整えようとしたが、腕に力が入らない。 視界がぼやける。 そのまま、大島は意識を失った。
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95 : ◆x1G.Xq6aH2 [sage]:2013/07/26(金) 14:23:31.54 ID:3JEpidkd0 - 【MOTORGIRLS VS CAR DEVILS】
大島「あ、あれ?」 目の前には、人形と見間違うほど美しい顔をした少女がひとり。 その後ろには少女と似通った服装の女の子達がそれぞれ、車に寄りかかるようにして立っている。 腕組みをし、挑戦的な視線を向けてくる。 そうか、これから対決するのだ。 ――危ない危ない、あたし何をボーッとしていたんだろう。 大島は自分がリーダーを務めるチームのメンバーを確認するため、ちらりと背後を見た。 バイクに跨り、整列したメンバーが無言でうなづく。 大島が再び前を向くと、相手チームのリーダーが生意気そうな顔でつんと顎を反らした。 確か、渡辺というやつだ。 相変わらずひらひらした格好で鬱陶しい。 そんな服の何がいいのだろう。 自分たちのように、もっと無駄をなくした、大人っぽい格好をしたらどうなのだ。 だいたい、車を乗り回していることにも腹が立つ。 オープンカー? 笑わせるな、中途半端もいい加減にしろ。 バイクこそ、本当の意味で風と一帯になれ、時の変化を感じられる極めて情緒的な乗り物なのだ。 大島「今日はまたどちらへお出掛けですか?お嬢さん方」 大島が先制し、渡辺を煽る。 渡辺がこちらをキッと睨みつけた。 渡辺「やだなんかその格好…汗臭そう…」 負けじと鼻をつまむ仕草をして、渡辺がしかめ面をして見せる。 渡辺チームのメンバーがクスクスと笑った。
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96 : ◆x1G.Xq6aH2 [sage]:2013/07/26(金) 14:24:19.85 ID:3JEpidkd0 - 大島「あぁん!?」
大島は目に力を入れると、渡辺に詰め寄った。 大島「ふざけてんじゃねーぞコラァ!」 渡辺「下品な言葉使わないで」 渡辺はそんな大島のこめかみの辺りを軽く小突いた。 大島が舌打ちをして離れていく。 仕切り直しだと言わんばかりに、メンバーに向かって肩をすくめて見せた。 それを合図に、メンバーは所定の位置につく。 振り返ると、渡辺のチームはすでにパフォーマンスのスタンバイを終えていた。 大島「手加減して欲しかったら今のうちに言えよ」 渡辺「そっちこそ、後で泣きを見ても知らないからね」 音楽が鳴る。 さあ、踊ろう。 どちらがこの街のシンボルにふさわしいか。 正々堂々と勝負しよう。
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97 : ◆x1G.Xq6aH2 [sage]:2013/07/26(金) 14:26:10.92 ID:3JEpidkd0 - 【GIANT MONSTER KITTY ALIEN】
柏木「あの、シェルターまで後どのくらいですか?」 柏木は先頭を走る峯岸に尋ねた。 峯岸「もうすぐだ」 峯岸はさっきからそれしか言わない。 柏木は不安になってきた。 避難させてくれるというから黙ってついてきたが、ひょっとして自分は峯岸達にかつがれているんじゃないだろうか。 しかし巨大怪獣によって瓦礫と化した街の風景を目にするたび、これが間違いなく現実に今起こっていることなのだと認識する。 頭上のヘリコプターの音も鳴り止まない。 専務「柏木くん大丈夫かい?疲れてないかい?」 そして専務は依然として鬱陶しい。 横山「ボス!」 峯岸「なんだ八つ橋!」 最後尾を走る横山が、大声を上げた。
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98 : ◆x1G.Xq6aH2 [sage]:2013/07/26(金) 14:26:59.96 ID:3JEpidkd0 - 横山「先ほどから同じところを回っているようであります!」
峯岸「そうか、街並みが大きく変化しているから、そういうこともある」 柏木「えぇ?もしかして道に迷ったんですか?」 峯岸「迷ってはいない」 柏木「嘘、今の絶対嘘。だって今一瞬顔が引きつったじゃないですか」 峯岸「見間違いだ」 横山「そうです見間違いです。柏木さん、ボスに謝ってください」 柏木「横山さんそれしか言わないんだから…もういい加減にしてください!あたし、ひとりで帰ります。実家まで地下鉄さえ動いていればなんとか乗り継いで…」 峯岸「待ちなさい!動くな!」 横山「謝ってください!」 専務「か、柏木くん!」 柏木「し、失礼します!」 柏木はちょうど目に付いた駅に飛び込もうとした。 その時――。
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109 : ◆x1G.Xq6aH2 []:2013/07/26(金) 15:59:07.98 ID:3JEpidkd0 - 高橋「思い出した?」
高橋が言う。 その隙に板野はスティックを振るい、峯岸の背中の傷を治してしまった。 ゆいはんと呼ばれたことに、横山は不思議そうな顔をしている。 峯岸も同じ反応だ。 高橋「気づいているのはあたしとともちん、ゆきりんの3人だけだよ」 柏木「たかみなさん、これ何ですか?なんで小さくなってるんですか?」 高橋「それはあたしとともちんがこの世界で、妖精という役柄だからだよ」 板野「ゆきりんの役はOLでしょ?それと同じだよ」 柏木「言ってる意味がわからないんですけど」 高橋「いいゆきりん?よく聞いて。あたし達メンバーは今、一見すると別々の世界に閉じ込められ、違う人格、記憶を与えられているの」 高橋「それぞれの世界は壁のようなもので仕切られ、まったく違う時間の流れ方をしている。みんな、自分が本当は何者で、なぜこんな世界にいるのか気づいていない」 柏木「閉じ込められてって…え?どういうことですか?」 高橋「たぶんここは、メンバー誰か深層心理が作った世界。あたし達は今、そこに閉じ込められているんだよ」 柏木「誰かって…誰ですか?」 板野「それがわかんないんだよね」 柏木「はぁ…」
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110 : ◆x1G.Xq6aH2 [sage]:2013/07/26(金) 15:59:59.48 ID:3JEpidkd0 - 高橋「あたしとともちんは、この世界のヒントみたいなものなの。ここから抜け出すためのヒント。だからゆきりんの前に現れた」
柏木「だったらもっと早く出て来てくださいよ」 板野「だってそこの人に閉じ込められていたんだもん」 板野がスティックで専務を示した。 専務は呆けた表情で座り込み、こちらの会話が聞こえているのかいないのか。 板野「アタッシュケース、ずっと持ち歩いてたでしょその人。歌詞カードが誰にも渡らないように」 高橋「歌詞カードを読まれると、あたし達が飛び出し、ヒントを与える。それがわかっていたから、その人は肌身離さず持ち歩いてたわけ」 柏木「なんでそんなこと…」 高橋「だってヒントをもらって誰かがこの世界を壊したら、この世界の住人である彼は消えてしまうでしょ?彼は現実には存在しない。深層心理が作り出した偽者なんだよ。その人は自分の存在を守るために、歌詞カードを隠しちゃってたの」 高橋の解説に、柏木はキッと専務を睨んだ。 だがすぐに視線を戻し、話の続きを促す。
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111 : ◆x1G.Xq6aH2 [sage]:2013/07/26(金) 16:01:12.99 ID:3JEpidkd0 - 柏木「それで、これからどうしたらいいんですか?」
その質問に対し、高橋は困ったように眉間を狭くした。 高橋「それがよくわかんないんだよね」 柏木「え?」 板野「あたしとたかみなはこの世界の実情を説明するだけだから。そこから先は考えなきゃ」 柏木「……」 高橋「あ、でも今のところ一番有利なところにいるのがゆきりんだよ」 柏木「あたしですか…?」 板野「そうそう」 高橋「ゆきりんは最初からこの世界を疑っていた。自覚はなかったんだろうけど、この世界…もっと言えばこの世界の住人に不信感を抱いてたでしょ?」 柏木「専務のことですね」 高橋「そう。だからゆきりんの置かれてる世界は、他のメンバーよりちょっとだけ世界の壁みたいなものが曖昧になっているの」 柏木「曖昧…じゃあその気になれば他の世界にいるメンバーとも接触できるかもしれないんですか?あたし達を隔てているのは壁っていうか、要は仕切りみたいなものなんですよね?」 板野「そうかもね」 柏木「でも一体どうやって…少なくともこの世界はかなり遠くまで広がっているみたいだし、さらにその先を進んで、どこまで行けば壁に突き当たるんだろう」
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